執炎 作品情報

しゅうえん

日本海の波が打ち寄せる山陰の浜辺で、一人の女が命を断った。七年前種々にとりざたされた噂も、今では人々がその青春を讃え、美しい供養をいとなんでいる。浜の男拓治が初めてきよのに会ったのは、十三の時であった。やがて水産学校を卒業した拓治は山で再びめぐり会ったきよのに、神秘的な美しさを感じた。きよのは、山奥の一角にある平家集落の娘であったが、二人の愛情は古い因習を破って結ばれた。しかし、二人の結婚生活は、戦争のため中断をよぎなくされた。召集された拓治を送ったきよのの節操ある生活は、村人の賞讃の的であったがきよのの胸中は、空しいものがあった。戦局の激しさにつれて、戦死者もふえ、拓治も佐世保病院で傷病生活を送っていた。右脚の損傷により生命の危険にさらされた拓治は、きよのの看病で奇蹟的に回復した。水入らずで闘病生活をするため建てられた山小屋で、日増に笑い声が聞こえるようになった。そして漁師として逞しく働きだした拓治ときよのは、戦争の恐怖におののきながら、狂ったように愛を確かめあっていた。そんな時きよのは親友の泰子の夫が戦死したのを聞き、恐怖から拓治への独占欲は深まっていった。ついに、拓治のもとに赤紙が舞いこんだ。しかし、一途なきよのの姿に拓治は、言葉をのんだ。愛蔵の能面をつけて舞うきよのの姿は、きよのの執念の叫びであった。拓治は出征した。きよのは、拓治の思い出を抱いてさまよい、凍てついた山道にお百度を踏んだ。思いつめた疲労から倒れたきよのは、こんこんと眠りつづけた。六月の初め拓治は南の海に散華した。事実を知らされず、やがて意識を回復したきよのは、仏壇の拓治の写真を見て全てをさとり、黒髪を切り仏壇に供えて、拓治の命を奪った海に静かに身を沈めた。

「執炎」の解説

加茂菖子の同名小説を「暗殺」の山田信夫が脚色「黒い太陽」の蔵原惟繕が監督した女性ドラマ。撮影は「おんなの渦と淵と流れ」の間宮義雄。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督蔵原惟繕
原作加茂菖子
出演浅丘ルリ子 松尾嘉代 信欣三 細川ちか子 伊丹十三 平田大三郎 奈良岡朋子 芦川いづみ 上野山功一 河上信夫 宇野重吉 山田禅二 村田寿男 千代田弘 紀原土耕 土田義雄 澄川透
配給 日活
制作国 日本(1964)
上映時間 120分

ユーザーレビュー

レビューの投稿はまだありません。

「執炎」を見た感想など、レビュー投稿を受け付けております。あなたの映画レビューをお待ちしております。

最終更新日:2024-10-30 02:00:04

広告を非表示にするには