五番町夕霧楼(1963) 作品情報

ごばんちょうゆうぎりろう

京都五番町タ霧楼の女将かつ枝は、夫伊作の死を聞いて駆けつけた与謝半島樽泊で、はじめて夕子に会った。夕子の家は木樵の父三左衛門と肺病の母、それに妹二人という貧乏暮らしであった。色白で目もとの涼しい夕子を、かつ枝は一目見て、いける子だと思った。長年の水商売の直感だ。夕霧楼につれてこられた夕子は、同僚のうけもよく、かわいがられた。そんな夕子にかつ枝は、夕霧楼とは長年のお得意の西陣の織元竹末甚造に水揚げをたのんだ。夕子の境遇に同情したおかつのはからいなのだ。数年前妻をなくし、独り暮しをつづける甚造は夕子の旦那としてはかっこうの男だった。それから素直にうなづいて甚造に従う夕子の姿が、夕霧楼にみられるようになった。甚造も美しい夕子の身体をほめ、ひきとりたいとおかつに話した。そんな時、この夕霧楼に一見学生風の陰気な男が、夕子を訪ねて来る様になった。見とがめたかつ枝の忠告を、常になくはねつける夕子の固い態度に、かつ枝は意外に思った。青年は櫟田正順という鳳閣寺の小僧だった。織物の展示会の日、甚造が会場に借りた燈全寺で青年を見てわかったのだ。寺の小僧に遊女を買う金がある筈がない。夕子を問いつめたかつ枝は意外なことを聞かされた。夕子と正順は幼な馴染みで、吃音のため誰からも相手にされず、狐独な正順を、夕子がかばっていたというのだ。泊っても、二人は故郷の美しい風景を語ったり童謡を口づさんでいるという。そして遊びの金は全部夕子が自前でもっていたというのだ。社会から疎外されうとまれる正順も、夕子にとってはかけがえのないやさしい人であった。夕子の身体を心配して高価な薬をもって来る正順、そんな二人も、甚造の企みから正順は鳳閣寺で折かんを受ける身となり、夕子も肺病で身を横たえる運命にあった。そんな夕子の耳に鳳閣寺放火の声が!! 狐独な正順の心が社会に放った復讐の一念だった。留置場で正順が自殺したと報じる新聞を手に、夕子は美しい百日紅の花のある故郷をなつかしく思った。蒼く澄んだ日本海を下に見る、故郷の墓地、今は全てを失った薄幸の夕子のうえに、その死体をつつむようにして真紅な百日紅が散りかかっていた。

「五番町夕霧楼(1963)」の解説

水上勉の同名小説より「武士道残酷物語」の鈴木尚之、「ちいさこべ」の田坂具隆が共同で脚色、「ちいさこべ」の田坂具隆が監督した文芸もの。撮影は「無法松の一生(1963)」の飯村正彦。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督田坂具隆
原作水上勉
出演佐久間良子 河原崎長一郎 進藤英太郎 木暮実千代 丹阿弥谷津子 岩崎加根子 木村俊恵 霧島八千代 清水通子 谷本小夜子 安城百合子 標滋賀子 赤木春恵 岸輝子 宮口精二 風見章子 北原しげみ 山本緑 東野英治郎 小林寛 河合絃司 千田是也 織田政雄 相馬剛三 織田政雄 千秋実
配給 東映
制作国 日本(1963)
上映時間 137分

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最終更新日:2024-11-22 02:00:06

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