流れの譜 第一部動乱 第二部夜明け 作品情報
ながれのふだいいちぶどうらんだいにぶよあけ
〔第一部・動乱〕昭和二年、旭川・歩兵第二十七連隊に赴任した陸軍中佐・菅原忠一郎には、屯田兵だった父・弥七郎、妻・丸枝と、忠節、忠礼、忠勇、忠信、忠淳、赤ん坊の忠質の六人の男児がいた。子供たちを全員軍人にするのが夢である忠一郎は、名前も軍人勅論から一字をとってつけた程であった。昭和十一年。次男忠礼は、忠一郎の望み通り、陸士の生徒になっていた。一方、病弱のため一高--東大に進んだ長男忠節は、左翼運動に走り、逮捕されてしまい、それを知った忠一郎は退役せざるを得なかった。昭和十二年。退役して中学の教練教師をしている忠一郎のもとへ、釈放された忠節が帰って来た。白刃を振りかざして怒る忠一郎に、忠節は「警察では拷問され二度とやらぬと言ったが、尊敬するお父さんには嘘をつきたくない。また、やるかもしれません」と言った。男らしく生きよ、という忠一郎の教えだけは受け継がれていたのだった。昭和十三年。華北戦線に出撃していた次男忠礼が戦死した。昭和十六年。太平洋戦争が勃発。翌年、三男忠勇が戦死。五男忠淳は、人の命を救える職につきたいという意志で、東大付属医専で勉強していた。貧しい生活だったが、同級生・久保の妹冴子に思いを寄せる青春の日々でもあった。この年53歳の忠一郎が召集され、息子たちの仇討ちだ、と勇躍出征した。翌年、忠節が共産党再建に活動した嫌疑で特高に捕まり、拷問を受けた末、横浜刑務所に送られた。昭和二十年。戦況は目に見えて不利になっていった。忠一郎は負傷し旭川の病院へ入院、忠淳と愛し合っていた冴子は、女子挺身隊員として動員され空襲で死亡、予科練に行っていた六男忠質も特攻隊員として敵艦に突っ込み、わずか18歳で戦死した。四男忠信も満州で戦死した。そして終戦--忠節は釈放され、妻・和江に迎えられた。〔第二部・夜明け〕復員してきて虚脱状態にある忠一郎は、忠淳にしみじみと言うのだった。「時代の波に流された流木だった俺とは違って、お前は大地に根を張った大木になってほしい」。昭和二十三年。共産党進出の仕事と戦争責任追求に忙しい忠節が菅原家に帰ってきた時、忠一郎は「お父さんは、お前のように、みんなが闘っていた戦争中冷やかにそれを見つめていた人間の気持ちが判らない。お父さんはもう一度、みんなと共に闘い、共に死にたい」と苦々しげだった。外科医として病院勤めをしていた忠淳が文子と見合い結婚し、孫のできた昭和二十三年、忠一郎は妻・丸枝に大好きな「桜井の別れ」を歌わせ、自らは軍人勅論を唱えながら生涯を終えた。10年後、丸枝はその後を追った。そして忠節も翌二十四年、結核で死んだ--。昭和四十四年。忠淳は医院を開業していた。ある日、刑事が訪ねて来た。長男太郎に過激派学生として逮捕状が出ていたのだ。その太郎は、伯父・忠節の未亡人和江の保育園にかくまわれていた。早速上京した忠淳に向って太郎は、自分は生来の臆病を断ち切ろうと思って学生運動に全力投球したこと。しかし、仲間同志が暴力沙汰に終始している現在、ついて行けないのでやめたい、と真情を吐露した。そして、警察に捕るのも恐いが、そんな自分の性癖に訣別すべく、一人で自首した。その後、釈放された太郎は、父の後を継ぐために北大医学部へ転入した。男らしく挫折から立ち直った太郎をみて忠淳は嬉しかった。四年後、早大生の次男次郎は、アルバイト、学生運動、そして海外旅行など自由奔放な生活をしていた。オートバイを乗り回して「緊張感のない現代、スピードを楽しむのも緊張感を求めてのことだ」とうそぶく次郎に忠淳は言った。「もしも、オートバイで他人を殺しそうになったら、お前が死んでも人を殺すな」「わかったよ、お父さん」うなずいた次郎は、若い娘を乗せて颯爽と走り去った。忠淳や文子、父母にも理解しがたい、菅原家の変り種のように思える次郎だが、自分の信念に忠実に生きているところは、次郎も立派な菅原家の血筋だ、と忠淳は思うのだった。
「流れの譜 第一部動乱 第二部夜明け」の解説
戦前、戦中、戦後の三代にわたって生きた軍人一家の系譜を、激動の昭和史と北海道の雄大な自然を背景に描く大河ドラマ。原作は菅忠淳の週刊朝日「わが家の三代」応募作品。脚本は「しあわせの一番星」の石森史郎と「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」の宮崎晃、監督は脚本も執筆している「必殺仕掛人 春雪仕掛針」の貞氷方久、撮影は「津軽じょんがら節」の坂本典隆がそれぞれ担当。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1974年6月22日 |
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キャスト |
監督:貞永方久
原作:菅忠淳 出演:笠智衆 田村高廣 司葉子 近藤正臣 市川海老蔵(市川團十郎) 竹脇無我 大谷直子 長山藍子 中島久之 森田健作 犬塚弘 松橋登 島田陽子 松坂慶子 上月左知子 田宮二郎 若林豪 高橋洋子 岩下志麻 |
配給 | 松竹 |
制作国 | 日本(1974) |
上映時間 | 170分 |
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