津軽じょんがら節 作品情報

つがるじょんがらぶし

津軽の荒れ果てた漁村に、中里イサ子がヤクザ風の若い男をつれて帰って来た。この村は東京のバーで働いていたイサ子の郷里である。男は岩城徹男、よその組の幹部を刺したために追われており、イサ子は徹男を匿うためと、出漁中に死んだ父と兄の墓を建てるつもりだったのだ。海辺の小屋で二人の新しい生活が始まったが、徹男にとっては単調な毎日が、やりきれなかった。そんな徹男を、盲目の少女・ユキは慕っていた。やがて生活に行きづまったイサ子は、村の飲屋に働きに出た。村から出ようという徹男に、イサ子は墓を建てるまで、と言い返すのだった。昼間、ユキと遊ぶ徹男は明るかった。そして徹男は、ユキの祖母から、盲目の少女はイタコか瞽女になる、という話を聞いた。イサ子の稼ぎを当てにしている徹男は、村の連中を集めて花札賭博に熱中していた。父の遭難には保険詐欺の疑いがあるとして保険金の支払いを拒否され、貯金通帳を飲屋の同僚に持ち逃げされるなど、イサ子の不運は続いた。しかも、次第に自分から離れていく徹男に不安を感じ、徹男と一緒に村を出ようと決心した。東京からの追手の気配を感じた徹男は、ユキを騙して金儲けをしようという、飲屋の主人・金山の話に乗った。翌日、旅仕度をした徹男は、何も知らないユキを、客のいる飲屋の二階へ連れて行き、イサ子の待つ停留所へ向った。その時、徹男は津軽三味線の音を聞いた。盲目の女旅芸人--瞽女の中にユキを見た。彼は幻想を見たのだ。身をひるがえした徹男は、飲屋へ戻り、ユキを救った。そして、徹男はこの村に留まる決心をしたのだった。そんな徹男を見てイサ子は「あんた、ふる里が見つかって、よかったわね」と咳くと、一人村を去っていった。以来、徹男は海に漁に出て働き、ユキの家に帰っては互いに求めあった。しかし、その幸福な日は長くはつづかなかった。ある夜、徹男は何者かに、ドスで腹をえぐられ、そのまま暗い河口へ落ちて入った……。

「津軽じょんがら節」の解説

故郷津軽を嫌って都会へ出た女が、愛人の殺傷事件によってふたたび津軽へ戻って来る。だが、その男は日本の土着的な空気に次第に惹かれていく……。脚本は「昼下りの情事 古都曼陀羅」の中島丈博、監督は脚本も執筆している「花心中」の斎藤耕一、撮影も同作の坂本輿隆がそれぞれ担当。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1973年12月20日
キャスト 監督斎藤耕一
出演江波杏子 織田あきら 中川三穂子 寺田農 戸田春子 東恵美子 富山真沙子 河村久子 田中筆子 佐藤英夫 西村晃
制作国 日本(1973)
上映時間 103分

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-14

この「津軽じょんがら節」は、「約束」「旅の重さ」に続く、斎藤耕一監督の"風土三部作"の第三作目の作品だ。

ヤクザ組織から追われる青年が、愛人の郷里である、津軽の漁村に流れて来る。

都会からもはみ出し、田舎にも馴染めなかった青年は、老いた漁師と盲目の少女と知り合い、この村に腰を落ち着けようとする。
しかし、その時、ヤクザの追っ手が--------。

人間のドラマ以上に、心に残るのが、どんよりと垂れ込める灰色の空、次々と押し寄せる北国の荒波だ。

全篇を貫くこの風景は、若者の叶う事のない、老いた漁師と盲目の少女の夢でもあった、ふるさと作りを拒否する、運命のようにいつまでも続いていく。

前二作に比べて、自然の厳しさと、その中での人間の卑小さと、それ故の愛おしさが強調されていると思う。

また、タイトルにあるように、白川軍八郎と高橋竹山の津軽三味線が、印象的に使われている。

高橋竹山が、渋谷のジァンジァンで、ライブをスタートさせて、新しい音楽として見出された時期だったという意味でも、タイムリーな作品だったのだろう。

最終更新日:2024-06-24 16:00:01

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