地平線(1984) 作品情報
ちへいせん
一九二〇年夏、藤木秀代は写真結婚でアメリカにやって来た。家の倒産を救うため彼女は多額の結納金を請求したが、それは夫になる良夫が十年間汗水流して貯めたものだった。それから、荒野の壮絶な生活がはじまった。灼熱の太陽の照る中、水を天びんで運び、石ころだらけの土地を耕す。秀代はホームシックでヒステリーを起こしたが、良夫の怒声がかえってきた。そうして、荒地も野菜畑に変わっていった。二十余年の歳月がたち、秀代は、太郎、サクラ、モモコ、アヤメと四人の母になっていた。一九四一年、十二月八日、日本の真珠湾攻撃で太平洋岸の日系移民、十二万は大統領令9066号により強制収容所送りとなる。藤木家はアリゾナ州ゴードン収容所に入れられ、土地も財産もただ同然で投げ棄てた。アメリカへの忠誠か、日本人たるべきかと重大な岐路に立たされた日系人は、一世と二世との間に骨肉の争いが起きる。ある日、スパイとして密告され拉致されたサトウを取り戻そうと暴動が起き、太郎が危険人物として捕えられた。収容所内では“忠誠登録”が優勢となり若者たちはアメリカ軍隊へ志願して行った。許されて戻った太郎も志願して出征した。原爆が広島に落とされ戦争は終った。一九四五年、収容所生活四年目、藤木一家はもとの土地へ戻ってきたが一からやり直しである。メキシコ国境に近いオータイバレーで土地が手に入ると知った彼らは、他の日系人と共に移り住み、荒地を耕した。終戦二年目、太郎が帰還する日、サクラもカリフォルニア大学から戻って来た。その間、良夫は山で事故にあい不慮の死を遂げていた。サクラは白人のボーイフレンドと一緒に暮らしており結婚するという。百姓の日本人を嫌う娘に秀代は失望するが、太郎が彼女を慰め畑を手伝い始めた。モモコも、また白人を好きになり出て行く。秀代は太郎に日本人の嫁をもらえと、日本へ送り出す。そして、太郎から秀代の育った広島で花嫁が見つかりそうだと、便りが届いた。
「地平線(1984)」の解説
実家の倒産を救うため、二十歳で渡米結婚した女性を中心に、アメリカの大地に生き抜いた日本移民たちの姿を描く。「北斎漫画」の新藤兼人が、実姉をモデルに書き下した「祭りの声」をもとに、彼自身が脚本化、監督した。撮影も同作の丸山恵司がそれぞれ担当。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1984年2月11日 |
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キャスト |
監督:新藤兼人
原作:新藤兼人 出演:乙羽信子 藤谷美和子 永島敏行 時任三郎 秋吉久美子 田中美佐子 川上麻衣子 ハナ肇 園佳也子 愛川欽也 井川比佐志 風間杜夫 西田敏行 草見潤平 篠塚勝 殿山泰司 戸浦六宏 森塚敏 土屋御代子 初井言栄 |
配給 | 松竹 |
制作国 | 日本(1984) |
上映時間 | 136分 |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「水口栄一」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-09
この映画は私にとって決して忘れられない作品だ。私が地平線を観たのはまだ20代の頃だった。何故かそのタイトルに惹かれて、映画館でスクリーンを見つめていた時を思い出す。これは何よりも人生についてしっかり考えさせてくれたと思う。藤谷美和子さんが出演されている。私は藤谷美和子さんの大ファンだ。今でも素晴らしい女優さんだと思っている。ほんとにいいオンナだと思う。この映画はカルフォルニアの荒野のまっただ中で、若い男と女が苛酷な自然とたたかって生きていく姿が描かれている。この作品はDVDも何もなく、現在まったく観ることができないが、もしいつか観ることができたら、ほんとに最高だと思う。また何度も観たくなる作品なのだ。私は今でも時々、この映画を思い出し、地平線のイメージを心に描くことがある。そして地平線の向こうに自分の人生を重ねている。