野菊の墓 作品情報
のぎくのはか
坂東三十三ヵ所お礼所の一番・杉本寺の石段を踏んでゆく一人の老人がいる。忘れ得ぬ人の魂の回向を思い立ち遍路の旅に出た斎藤政夫老である。老人の脳裏に、半世紀以上も昔の思い出があざやかによみがえっていた。田園風景が美しい江戸川べりの村。政夫の生家は、醤油の醸造業を営む旧家だ。政夫が十五歳のとき、病弱の母きくの世話をするため、従姉で二つ歳上の十七歳の民子が家に住むようになった。以来二人の仲は親密になり、姪の初子や奉行人の間で噂にのぼった。きくは奉行人をいましめ、二人をかばうが、なるべく会わないようにと話す。それが二人の思いを淡い恋心に変えていった。二人の仲を中傷する周りの声は強まり、心配したきくは、政夫を予定より一ヵ月早めて中学の寮に入れることにした。一方、正月には帰るという政夫を待つ民子に縁談が持ち込まれた。拒む民子だが大人たちは一方的に話をすすめる。そのやり方に憤慨した女中のお増は、政夫にその話を知らせた。やっとのことで花嫁行列にかけつけた政夫は、民子の車めがけて、りんどうの花を投げつけることしか出来なかった。それから数ヵ月後、政夫のもとへ帰宅するようにときくから電報が届いた。家に戻った政夫に民子の死の知らせが待っていたのだ。民子は流産し、嫁ぎ先で冷たい仕打ちにあって実家に戻され病床についたまま、帰らぬ人となったのだ。政夫は激しく泣いた。時は流れた。今、政夫は残り少ない人生を、民子の清らかな魂の故郷へむかって巡礼の旅に出ようとしていた。
「野菊の墓」の解説
明治末期、15歳の少年と17歳の少女の淡い恋と、周りの大人たちの中傷で悲しい結末をむかえるまでを描く。伊藤左千夫の同名の小説の映画化で、過去に「野菊の如き君なりき」の題で木下恵介、富本壮吉で二度映画化されており、今回が三度目。脚本は宮内婦貴子、監督はこれがデビュー作となる澤井信一郎、撮影は森田富士郎がそれぞれ担当。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1981年8月8日 |
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キャスト |
監督:澤井信一郎
原作:伊藤左千夫 出演:松田聖子 桑原正 村井国夫 赤座美代子 樹木希林 湯原昌幸 小甲登枝恵 大井小町 酒井愛美 相馬剛三 高月忠 泉福之助 奈辺悟 団巌 坂本良春 藤木武司 大栗清史 沢竜二 常田富士男 田倉しの 叶和貴子 沢田浩二 佐川二郎 村添豊徳 大島博樹 森田正雄 愛川欽也 白川和子 丹波哲郎 加藤治子 島田正吾 |
配給 | 東映 |
制作国 | 日本(1981) |
上映時間 | 91分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。
P.N.「水口栄一」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-03-21
野菊の墓を観て、とても感動した。私は昔から伊藤左千夫さんの大ファンだった。野菊の墓だけでなく、好きな小説はたくさんあるが、野菊の墓を初めて読んだ時の衝撃は決して忘れることができない。だからあらためてこの映画を観たのだ。これはあまりにもインパクトがあると思った。また明治時代の男女間や家の考え方、生き方など現代との違いについて考えさせられると思う。素晴らしい作品だ。