P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2023-11-10
場末の酒場のピアノ弾き、シャルリを演じるシャルル・アズナヴールが絶妙だ。
絶望しながらも生きていく人生の味といったものが、映画を観終わった後、胸の奥にソッと残される、そんな感じの映画なのです。
随所にフランス映画的なエスプリが散りばめられていて、楽しませてくれます。
特に、シャルリの幼い弟を誘拐する、二人の悪漢の憎めない好人物ぶりが愉快です。
ラストの雪の中の一軒家をめぐる銃撃シーンは、殺し合いなのに、なぜか牧歌的でのんびりしたものがあります。
暴力は大嫌いだという、フランソワ・トリュフォー監督の面目躍如といったところで、犯罪映画の形を借りた”愛の映画”になっているのです。
二枚目でも、タフガイでもない主人公のシャルリが、この犯罪映画でもあり、恋愛映画でもある、この映画にピッタリで、特に彼のシャイな雰囲気の描写は、つっぱらない映画の楽しさを満喫させてくれます。
それは、いかにも”フランス的洒脱さ”と言ってもいいのですが、粋に昇華しないのは、そこに人生への”苦い絶望”が込められているからだと思うのです。