地下水道 作品情報
ちかすいどう
一九四四年九月末、爆撃と戦火で廃墟化したワルシャワの街。過去数年つづけられてきたパルチザン部隊による地下運動も悲惨な最終段階に達した。ザドラの率いるパルチザン中隊もドイツ軍に囲まれ、もはや死を待つばかり。そこで彼らは地下水道を通り市の中央部に出て再び活動をつづけることにした。夜になって隊員は地下水道に入った。中は広いが汚水が五十センチから一メートル半にも達している地下水道は暗黒と悪臭の無気味な世界である。隊員はやがて離ればなれになり、ある者は発狂し、またある者は耐え切れずマンホールから表に出てはドイツ軍に発見され射殺された。地下水道へ入る日、負傷したコラブ(タデウシュ・ヤンチャル)と、彼を助けて道案内してきたデイジー(テレサ・イゼウスカ)の二人も、やっと出口を見つけたと思ったのも、そこは河へ注ぐ通路と知って、落胆の余りその場に坐りこんでしまった。そのころ、先を行くザドラと二人の隊員は遂に目的の出口を見つけた。が出口には頑丈な鉄柵が張られ、爆薬が仕かけられていた。一人の隊員の犠牲で爆薬が破裂、出口は開かれた。ザドラと残った一人の従兵は地上へ出た。がこのときザドラは他の隊員がついてこないのを不審に思い、従兵に尋ねた。従兵はザドラが隊員を連れてくるようにとの命に背き、彼らは後から来ると嘘を言い、自分だけが助かりたいばかりにザドラについてきたのだ。これを知ったザドラは従兵を射殺。そして彼はこの安全な出ロまで地下水道をさまよう隊員を導くため再びマンホールに身をひそませた。
「地下水道」の解説
第二次大戦下のポーランドにおける対独ゲリラ戦の一挿話を描いた一篇。イェジー・ステファン・スタウィニュスキーの原作『下水渠』をスタウィンスキ自ら脚色、三十一歳の若手アンジェイ・ワイダが監督した。撮影はイェジー・リップマン、音楽はヤン・クレンズ。主演はタデウシュ・ヤンチャル、テレサ・イゼウスカ、ヴィンチェスワフ・グリンスキー、そのほかポーランド国立映画アカデミーの学生たち。一九五七年度カンヌ国際映画祭・審査員特別賞、一九五七年度モスクワ世界青年平和友好映画祭青年監督賞をそれぞれ受賞。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:アンジェイ・ワイダ
原作:イェジー・ステファン・スタウィニュスキー 出演:テレサ・イゼウスカ タデウシュ・ヤンチャル ヴィンチェスワフ・グリンスキー Tadeusz Gwiazdowski スタニスラウ・ミクルスキー エミール・カレウィッチ Wladyslaw Sheybal Teresa Berezowska ヤン・エングレルト アダム・パウリコフスキー |
---|---|
配給 | NCC=日活 |
制作国 | ポーランド(1956) |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2023-11-11
このアンジェイ・ワイダ監督の「地下水道」は、第二次世界大戦下のポーランドのワルシャワの地下の暗闇での、レジスタンスの絶望的な戦いを描いた問題作だ。
1944年9月、ワルシャワのポーランド軍は、対岸にいるソ連軍の援助もないまま、ドイツ軍との絶望的な戦いを続けていた。
この映画の3分の2は、レジスタンスが逃げ込んだ、地下水道の中の描写で占められており、暗闇でうごめく彼らの極限状態を映し続けていく。
明るい外界を目前にして、鉄格子に遮られて、立ち尽くす者など、単なる歴史的事実を越えた、映像のパワーに満ちている。