暗殺の森 作品情報

あんさつのもり

どう見てもマルチェロ(J・L・トランティニャン)は若くて健康な青年だったが、十三歳のとき体験した事件が深く心につきささり、今もってぬぐいさることができない。あれは学校の帰り道のときだった。友だちにいじめられているところを軍服姿のリノ(P・クレマンチー)が助けてくれ、家に連れていかれた。リノはかつて牧師であり、その自分が少年に慾望を抱いたことで傷つき、マルチェロに拳銃を渡し、撃つように頼んだ。マルチェロは引金をひいてその場から逃げた。大人になったマルチェロは、殺人狂かもしれない自分の血筋から逃れるために、熱狂的なファシストになっていった。大学で哲学の講師をしている彼は、大佐から近く内務省に出頭するよう命じられた。そして、彼の恩師であるカドリ(D・タラシオ)について調査せよとの命令が下ったとき、彼は婚約者のジュリア(S・サンドレッリ)との新婚旅行と、任務を同時にやりたいと提案した。パリに亡命しているカドリを訪ねるにはうってつけの口実だ。政府のエージェントとしてマニャニエーロ・(G・マスキン)が同行することになった。やがて命令が変更され、カドリから情報を得るだけでなく、彼の抹殺に手をかすよう要請された。パリに着いた新婚夫婦はカドリの家へ招待され、彼が最近婚約したアンナ(D・サンダ)に紹介された。数日後、ふた組の夫婦がレストランで会ったが、片隅にはマニャニエーロが隠れていた。アンナがサボイアにある彼女の家へ行こうと誘ったが、マルチェロと二人きりになりたかったジュリアが断わると、明日ベルサイユに案内しようといった。再び尻ごみするジュリアを、マルチェロが注意し、結局その夜はサボイアの家に泊ることになった。夕食の後、四人はダンス・ホールへ行った。マルチェロは、後をつけてきたマニャニエーロに、明日はサボイアの家からカドリが車で一人ででるだろうと教えた。ジュリアとアンナをベルサイユに連れて行けば、カドリは一人になるはずだった。翌朝早く、マニャニエーロが電話でカドリがでたことを知らせてきた。しかしその車にはアンナも乗っていた。二人が乗った車をマルチェロとマニャニエーロの車が追った。そしてマルチェロの目の前で、アンナもカドリの道連れになって殺された。数年後、マルチェロはジュリアと小さな娘の三人でローマのアパートで暮していた。一九四三年七月二五日、ラジオがファシズムの崩壊を報じた。盲目の友人イタロから電話があり、町にいっしょにいってその状況を説明してくれという。彼はイタロを連れて大混乱の夜の町を歩き、曲り角へきたとき、自分の目を疑った。少年の日の思い出が、奔流のように彼の頭の中をかけぬけた。そこには自分が射殺した筈のリノが生きているではないか。すべてが虚構だった。彼自身をふくめた一切の過去がくずれ去っていった。

「暗殺の森」の解説

一九二八年から四三年までの、ローマとパリにおけるファシズムがおこってから崩壊するまでの物語。製作はマウリツィオ・ロディ・フェ、監督・脚本はベルナルド・ベルトルッチ、原作はアルベルト・モラヴィアの「孤独な青年」。撮影はヴィットリオ・ストラーロ、音楽はジョルジュ・ドルリューが各々担当。出演はジャン・ルイ・トランティニャン、ステファニア・サンドレッリ、ドミニク・サンダ、ピエール・クレマンティなど。2015年10月31日よりデジタルリマスター版を限定公開。

ベルナルド・ベルトルッチの日本デビュー作をデジタル・リマスター版で上映。幼少期の性的トラウマがきっかけで、熱狂的なファシストになった青年マルチェロ。反ファシズム運動家の大学教授の暗殺を命じられるが、その美しい夫人に心を奪われる。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1972年9月2日
キャスト 監督ベルナルド・ベルトルッチ
原作アルベルト・モラヴィア
出演ジャン・ルイ・トランティニャン ステファニア・サンドレッリ ドミニク・サンダ ピエール・クレマンティ ガストーネ・モスキン Enzo T'arascic Jose Quaglic Milly ジュゼッペ・アドバッティ
配給 パラマウント=CIC
制作国 イタリア(1970)
上映時間 115分
公式サイト http://mermaidfilms.co.jp/Ilconformista

(C)1971 Minerva pictures Group All rights reseived.

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、5件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-21

若い哲学講師のマルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、13歳の時、彼を犯そうとした同性愛の男をピストルで射殺し、それ以来、罪の意識に悩んでいた。

そして、少年時代の悪夢から逃れるため、彼はファシストとなり、哲学を学び、プチ・ブル娘ジュリア(ステファニア・サンドレッリ)と結婚する。

彼はファシスト党から、反ファシストの教授の暗殺を命じられるが、教授の妻アンナ(ドミニク・サンダ)に心惹かれ、暗殺遂行を躊躇するのだった。

「ラストエンペラー」で世界の映画界に改めてその実力を見せつけたベルナルド・ベルトルッチ監督の、この映画「暗殺の森」は、彼の29歳の時の作品だ。

ベルトルッチ監督は、1962年に若干21歳の若さで処女作「殺し」を発表、その鋭い感性は、イタリア映画界に衝撃を与えたのです。

そして、その後も「革命前夜」「暗殺のオペラ」を発表して実績を重ね、それを武器に「暗殺の森」に十分な予算とスケジュールを得て取り組んだのです。

最終更新日:2024-07-31 16:00:01

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