パリの灯は遠く 作品情報
ぱりのひはとおく
1942年3月。ドイツ軍占領下のパリは、暗く沈んでいた。独身の美術商ロベール(アラン・ドロン)にとって、この時代の方がむしろ商売になる。彼はユダヤ系の人々が手放す先祖伝来の美術品を安く買いたたいてはもうけていた。その朝もロベールのアパートに男が美術品を売りに来る。愛人ジャニーヌ(ジュリエット・ベルト)をベッドに残し、取引する彼。男が去ったあと、1通の郵便物が落ちていた。“ユダヤ通信”。なぜ、ユダヤ人でない自分の所に送られて来たのか……。この“ユダヤ通信”はユダヤ人の情報交換に役立つもの。もう1人同姓同名の人間がいる。そして、その人間とまちがわれて自分がユダヤ人として登録されたら……、ロベールを襲う不安な焦燥。そんなある日、一通の手紙が届いた。恋人との約束をうながす口説き文句。事実を知ろうとしたロベールは、手紙の指示通り汽車に乗り、郊外へ向かう。そしてある城へと案内された。そこは晩さん会。手紙の差出人フロランス(ジャンヌ・モロー)が声をかけるが、ロベールを自分の愛人ではないと知って、去って行った。一方、パリでは連日のようにユダヤ人狩りは続いている。ロべールは疑惑の中、身の潔白を証明するため、父の元に急いだ。父はカトリック系、母はアルジェ生れの、共にフランス人。彼は友人の弁護士ピエール(ミシェル・ロンダール)に証明書類の作成を依頼する。が、アルジェもドイツ占領下のため手続きは困難を極めた。不安の日々は続く。ついに警察の手入れでロベールは全財産を失ない、ジャニーヌまでもが彼より去って行った。「きっと奴を探し出してやる!」。彼はある貴族に名を変え、執拗に追跡を始める。汽車の中で偶然に別のロベールを知っている女に出会う彼。このことをピエールに電話で知らせ、彼がアパートに帰った時は、もう1人のロベールは警察に連れ去られた後だった。通報したのはピエール。6月16日、朝、パリのユダヤ人大検挙が行なわれた。郊外に集められた人々。中にロベールもいた。「ロベール!」氏名を発表するアナウンスに、ロべールはわが目をうたがった。何と、もう1人のロベールが挙手しているのだ。しかし人波はゆれた。出生証明を手にしたピエールの声を後に、ロベールも人混みの中をもまれていく。そしてアウシュビッツ行き収容列車に乗り込んだ時、ロベールの目前でその扉は重苦しく閉ざされた。
「パリの灯は遠く」の解説
運命のいたずらにもてあそばれる平凡な男の悲劇を描く。76年度フランス・アカデミー賞作品賞、監督賞、美術賞受賞作品。製作はレイモン・ダノン、監督は「暗殺者のメロディ」のジョゼフ・ロージー、脚本はフランコ・ソリナスとフェルナンド・モランディ、撮影はジェリー・フィッシャー、美術はアレクサンドル・トローネ、音楽はエジスト・マッキとピエール・ポルトが各々担当。出演はアラン・ドロン、ジャンヌ・モロー、シュザンヌ・フロン、ミシェル・ロンダール、ジュリエット・ベルトなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1977年9月23日 |
---|---|
キャスト |
監督:ジョセフ・ロージー
出演:アラン・ドロン ジャンヌ・モロー シュザンヌ・フロン ミシェル・オーモン マッシモ・ジロッティ ミシェル・ロンダール ジュリエット・ベルト フランシーヌ・ベルジェ |
配給 | 東宝東和 |
制作国 | フランス(1976) |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「PineWood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2017-06-04
本編をスターチャンネルのアラン・ドロン特集で観ました。パリの街そのものが主人公の様な作品。追い求める男の存在が自分自身で有ると言うカフカ的な迷宮の虚構!本編で夜、電話を掛ける相手は同じ名前の男のユダヤ人?冒頭のルーツを巡る屈辱的な身体検査の場面。監督ジョセフ・ロージは自らの赤狩りのマッカーシー旋風体験と占領下パリのナチス・ファシズムを重ねて捉えたのだろう。