間違えられた男 作品情報

まちがえられたおとこ

ニューヨークのストーク・クラブでバスを弾く貧乏楽士マニイ・バレストレロ(ヘンリイ・フォンダ)は妻のローズ(ヴェラ・マイルズ)の歯の治療代300ドルを工面するため、ある日、ローズの保険証書を抵当に金を借りようと保険会社の門をたたいた。窓口係のデナリーが、ふとマニイの顔を見て驚いた。忘れもしない、この事務所に2度も強盗に押入った男の顔とそっくり。デナリーは態よくマニイを待たしておいて警察へ急報。マニイは刑事主任バワースとマシューズ刑事によって第110区の警察署へ連行された。身に覚えのないことではあったが、筆跡まで強盗犯人と酷似しており、保険会社の参考人によってマニイは真犯人と断定された。その夜は留置所に、翌朝、手錠をはめられたマニイは予審裁判所で正審までの保釈金7500ドルを要求され、理解に苦しむままにロングアイランド刑務所の独房に入れられた。しかしマニイの姉オルガの奔走で保釈金の工面に成功、マニイは一時帰宅の自由を得た。ローズはオコンナー弁護士(アンソニー・クェイル)に夫の弁護を依頼、ここから困難なマニイの無実を証明する証人探しが始まった。事件当日の記憶をたどり、2人の証人となる人間が見つかったが、不運なことに2人とも既に死亡していなかった。ローズは絶望の余り精神が錯乱、入院の悲劇を迎えた。やがて初公判が開かれた。オコンナーは、保険会社のデナリーの記憶の不確実さを追求したが公判は、更に別の日にやり直しと決まった。ところが、その夜、食料品店を襲ったダニエルという男が捕まえられ、調べが進むにつれて彼が保険会社事件の真犯人と判った。ダニエルはマニイと生写しであった。事件は急転解決、冤罪をそそいだマニイは朗報を伝えるため妻のローズがいる郊外の療養所へ車を飛ばした。ローズは夫の明るい顔を前にして相変らず黙り込んだまま。心に刻まれた彼女の傷は一朝にして癒えないのだ。しかしマニイは、きっと妻を立直らせると誓った。

「間違えられた男」の解説

アルフレッド・ヒッチコックが「知りすぎていた男」に続いて監督したスリラー映画。原作は「悪い種子」のマクスウェル・アンダーソンが書いたが、題材は1953年、ニューヨークで起こった事件に基づくノン・フィクション。アンダースンと「知りすぎていた男」のアンガス・マクフェイルが共同で脚色した。撮影は「放浪の王者(1956)」のロバート・バークス、音楽は「灰色の服を着た男」のバーナード・ハーマンが担当した。主演は「戦争と平和」のヘンリー・フォンダ、「捜索者」のヴェラ・マイルズ、「戦艦シュペー号の最後」のアンソニー・クェイル。

公開日・キャスト、その他基本情報

配給 ワーナー・ブラザース
制作国 アメリカ(1956)
上映時間 105分

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、3件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-02

アルフレッド・ヒッチコック監督が、「実話に基づいた映画」を撮ったのは、この「間違えられた男」が、最初で最後だった。
そして彼が、自らカメオ出演しなかった作品も、この映画一本だけだ。

もっとも、映画の冒頭、彼は逆光の中にたたずみ、「これは、私の映画の中では異色の作品です」と観る者に語りかける。

ところが、この「間違えられた男」は、ドキュメンタリーよりも寓話の匂いを強く漂わせている。
黒白の簡潔な構図や、時間の直線的な処理は、ドキュメンタリー的なのだが、観終えるとなぜか、脂の乗った物語を聞かされたような後味が残る。

主人公は、ニューヨークのナイトクラブで働いている堅物のベース奏者マニー(ヘンリー・フォンダ)だ。

彼は、派手なクラブで黙々と演奏し、仕事が終わると毎朝、定刻に帰宅する。 そんなマーニーがある日、強盗犯に間違われて逮捕される。 顔や様子がそっくりという証言が相次いだからだ。 善良な羊を演じるヘンリー・フォンダの人相が、どこか邪悪で陰険な気配を放つのも、話の隈取りを濃くしていると思う。 さらに、随所で用いられるフェイドアウトの技法は、「——」で終わる文章のような効果をもたらす。 冒頭の宣言にもかかわらず、ヒッチコック監督は、快楽的な映画作家の本能をつい覗かせてしまったようだ。

最終更新日:2024-06-12 16:00:02

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