P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-03
第一次世界大戦を題材にしたこの映画「素晴らしき戦争」は、とにかく、あらゆる面で面白い。
監督は、「ガンジー」「遠い夜明け」の名匠・リチャード・アッテンボローのデビュー作で、CGなしで撮った執念のラストシーンには驚愕してしまいましたね。
もともとが舞台劇なので、いかにもイギリスらしいブラックなユーモアに満ちていて、「モンティ・パイソン」と「ジョン・レノンの僕の戦争」を足して2で割ったような映画なんですね。
この第一次世界大戦の原因のひとつが、当時の"欧州王朝ネットワーク"の機能不全だったことを見せる、オープニングのセンスからしてただ者ではなく、"反戦映画"などという安直な概念を突き抜けた辛辣さがあると思う。
なにしろ凄まじいことに、この映画には無駄なセリフや無駄なシーンはひとつもない。
正確に言うと、ほとんどのセリフに二重三重の意味がかけられているんですね。
そのため、この映画の本当の凄さ、面白さを堪能するためには、史実や欧州の文化というものを、ある程度、知らないと難しいと思う。
因みに、ラスト間際のセリフの11時とは、第一次世界大戦の休戦発効が、1918年11月11日午前11時だったのと、イギリスの劇場ではグランドフィナーレが、午後11時だったのをかけたものなんですね。 また、戦死800万以上、負傷2,100万以上、民間の死者664万人以上というとんでもない犠牲を出した戦争を皮肉る、流行歌や賛美歌の替え歌もシュールにして痛烈で、笑いながら観ているうちに肌が粟立つような感覚に襲われるほどだ。 1914年の最前線クリスマス交歓、ヘイグの徴兵政策、毒ガス戦と砲撃戦、ソンムやイープルの戦い、アメリカの参戦等々を織り込んで戦況と世相の推移を見せるのも、実に素晴らしいと思いますね。