殺しのドレス 感想・レビュー 2件
ころしのどれす
総合評価5点、「殺しのドレス」を見た方の感想・レビュー情報です。投稿はこちらから受け付けております。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-21
正から負へのボルテージの反転という彼のこの手法は、「キャリー」のハイライト・シーンで延々たるスローモーションの後に、主人公を幸福の絶頂から奈落の底へと突き落とした瞬間に開花していたと思う。
「殺しのドレス」では、アンジー・ディッキンソンが情事の後の心地よい疲労感に酔いながら、健康診断書の一文を盗み見る一瞬に集約されている。
その一瞬を境に、物語は加速度的に不吉な雰囲気を増し、エレベーター内でのカタストロフへとなだれ落ちていく。
この作品を支配する二面性—現実と悪夢、都会的に洗練されたタッチとプリミティブな血のイメージ、エロティックな官能美と剃刀の刃が代表する金属質のクールさ、鏡に象徴される性倒錯者の実像と虚像—は、このように相対する”陰”と”陽”の接点を、鮮やかに描き分けるブライアン・デ・パルマ監督の独自の手法によって、銀幕上で融合するのだ。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-21
映像の魔術師、ブライアン・デ・パルマ監督の華麗な映像テクニックは、銀幕の上に”悪夢”を現出させてしまう。
この場合の悪夢とは、「キャリー」のショッキングなラスト・シーンのように、文字通りの悪夢という意味合いでもいいし、彼の作品中で起きるサスペンスフルで異常な事件そのものが、悪夢なのだと考えてもいい。
それによって彼は、我々観る者を”現実世界”から一気に、映画という非日常的な”虚構世界”の内へと引きずり込む。
この「殺しのドレス」においても、オープニングとエンディングを飾る悪夢は、作品そのものを一つの異次元空間として、現実から切り離すキーの役目を見事に果たしていると思う。
この”現実”から”悪夢”へとワープする一瞬の落差が、ブライアン・デ・パルマ監督作品独特の恍惚感とも言える、スリリングな感興を引き起こす。
それは、エレベーターで急降下する際のちょっと気の遠くなるような眩暈の感覚にも似ている。