P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-08
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
少年の母親の必死の頼みに、グロリアは最初こう言って断る。
「子どもは嫌いなのよ。特にあんたの子はね。」実に、ハッキリした物言いの女だ。
孤独を引き受けてタフに生きる女は、優しさの安売りなど決してしない。
だが逆に、孤独を知っているからこそ、本当の優しさを心に隠し持っているんですね。
少年の生死を分ける切羽詰まった状況で、グロリアは少年を見捨てられず、彼をかくまってやることになる。
追って来る組織のチンピラどもに立ち向かうグロリアの凄み、これが非常にシビレるほどカッコいい。
「撃ってごらんよ、このパンク!」、ピストルを構えるその足元はハイヒール。スーツはエマニュエル・ウンガロ。
疲れた顔の中年女が、かつてこれほどクールだった事はなかったと思います。
全く、ジーナ・ローランズには痺れてしまいます----------。
安ホテルを泊まり歩く逃避行の中、グロリアと少年の信頼の度は、しだいに深まっていくのだが、グロリアの態度がこれまたクールなのだ。
少年に対して、可哀想な子供扱いは一切なし。
夜、寝る前に、自分のスーツをバスルームに下げてシワを取るようにと少年に言いつけたりする。 一方、少年の方は母親に言いつけられて、それをやるという感じではなく、何か同志のサポートをしているふうに見えてしまう。 一度、グロリアが少年に朝食を作ってやろうとする場面は、私がこの映画の中で最も好きなシーンだ。 フライパンで卵を焼いてはみたが、コゲついてしまい、グチャグチャになってしまう。 すると、いきなりフライパンごとゴミ箱に投げ捨てるグロリア。 結局、朝食はミルクのみ----------。 コワモテの女の優しさが乱暴な形で出るところが、いかにもグロリアらしくて、実にグッとくるのだ。 この映画は、ハードボイルドの衣をまとった「家族の物語」だと言えると思います。 グロリアと少年フィルの関係を通じて、カサヴェテス監督が描こうとしたのは、人種や血縁の壁を超えた、新しい人間関係の可能性と、その温もりだと思います。