P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-17
母と娘。ごく普通のアメリカの女二人。
母は娘を愛し、娘の選んだ結婚の相手を嫌い、時に慰め合い、時に罵り合い、長距離電話をかけ合う二人。
さりげない日常生活のリアリティが、なまじっかメロドラマ仕立てに粉飾をした物語より、遥かに心の奥深く、人生の真実を語りかけてくるのだ。
母がシャーリー・マクレーン。娘がデブラ・ウィンガー。
このシャーリー・マクレーンが、実に良い。
表面上の新鮮さだけを売りものにして、スターと称する女性が多い中、まさにこれが、本物の”女優”と言える、繊細な心理表現と華麗な存在感を見せて、我々観る者の胸をときめかせるのだ。
彼女の隣に住み、恩給で自堕落な生活を送っている、元宇宙飛行士がジャック・ニコルソン。 過去の栄光、その残照にすがる事しか生きる術がなく、それでいて優しい心で彼女を包む彼。 「イージー・ライダー」で彼が演じた、さ迷えるインテリという、その原点に返って、素晴らしい味わいだ。 やがて、娘の死による人生の別離。 ここでも、淡々とした描写は変わらないのだが、それだけに現実感もひとしおで、人の世の哀しみが胸に染みて泣かせる。