日時:5月8日(日)
場所:イオンシネマ シアタス調布
登壇者:阿部 寛、瀬々敬久監督
幾度途切れても必ず繋がってゆく親子の絆を描く、重松 清による不朽の名作小説「とんび」。今この時代にこそ届けたいと、初映画化が実現した。主人公の、破天荒ながら愛すべき父・ヤス役には、『テルマエ・ロマエ』「下町ロケット」などの大ヒット作で、圧巻の表現力と存在感を放つ阿部 寛、ヤスの息子・アキラ役には、若手実力派の中でも突出した才能を発揮する『君の膵臓をたべたい』『東京リベンジャーズ』の北村匠海、さらに多くの深遠な物語をエンターテイメントとして昇華させてきた監督・瀬々敬久の元に、薬師丸ひろ子、杏、安田 顕、大島優子、麻生久美子ら他豪華キャストが集結した!これは、古き良き時代の物語にとどまらない、新たな時代への希望を予感させる、今、そして未来へ繋がる家族の絆の物語です。主題歌は、デビュー25周年を迎える人気アーティスト、ゆずが書き下ろし楽曲「風信子」が担当。映画『とんび』は、4月8日(金)に全国公開となった。劇場を訪れた方たちからは「今年で一番泣いた」「会場が感動と共感に包まれていた」「不器用なお父さんの姿に涙が止まらなかった」との声が上がり、各レビューサイトでも続々と高評価が寄せられている。この度、感謝を込めて主演の阿部寛と瀬々敬久監督によるティーチインイベントが実施された。
イオンシネマ シアタス調布で行われたイベントでは、上映後に阿部寛と瀬々敬久監督が登場すると会場から暖かい拍手が沸き起こった。冒頭の挨拶では、阿部「皆さん今日はよくおいで下さいました。この映画は本当に出演できてよかったと思える素晴らしい映画です。普段あまりティーチインイベントをやる事はないのですが、今日はよろしくお願いします。」、瀬々「調布と言えば映画の街で、撮影所も沢山あるのでよく仕事でも来ています。今日はそんな調布で皆さんとお会いできて嬉しく思っております。」と会場の観客へ感謝を述べた。阿部も調布には撮影でよく訪れるといい、映画と深い繋がりのある場所でのイベントに感慨深い様子であった。まず公開から約1ヵ月が経った今でも感動の声が多く寄せられていることについて、阿部「非常にいい反響を頂いています。本当に観て感動したという声が多く、僕自身もそれを聞いて心から嬉しく思っています。」、瀬々「公開後に日比谷の映画館に観に行ったんですが、男性がよく泣いています(笑)先日知り合いが観に行ったら、女子高生が隣のおじさんが泣きすぎてうるさかったと言っていたという話を聞きました(笑)ありがとうございます!」と父と子の物語だけに多くの男性客に刺さっていることを実感していた。また本日が母の日であることにちなみ、母の日の思い出について聞かれると、阿部「カーネーションくらいしかあげた記憶がないんですけど(笑)父は寡黙な人だったのですが、母は教育熱心で何かあると相談していたなという思い出があります。」と自身の母親とのエピソードを明かした。
ここで会場の観客とのティーチインを実施。最初に女性客から「映画の中で歌ってた曲で気に入ってるものや監督からの演出などはありましたか?」という質問に、阿部「フィンガー5さんの『恋のダイヤル6700』は時代を代表する曲で印象的でしたが、本番で歌う・歌わないの2テイク撮ったんですけどちゃんと使われていて嬉しかったです。あとは酒場で『十九の春』を歌うシーンも好きでした。人を励ますシーンで歌うのに、歌詞の内容があっているのか撮影中は全員疑問に思っていたんですけど、皆で合唱したときに皆で励まし合う輪ができたのは、監督の狙いだったのか映画の中でも一番感動しました。」と現場でのエピソードを明かした。また選曲の意図を聞かれた監督も「フィンガー5は阿部さんが勝手に歌ったんですけど(笑)、フィンガー5は沖縄県出身で、『十九の春』も沖縄民謡で、本作が沖縄返還された辺りの時代設定ゆえに、時代を表している2つの歌を使用することにこだわりました。『ダイナマイトが百十五屯』は昔東京に上京した時に先輩がよく歌っていたんです(笑)」と選曲に隠された裏話を明かした。
続いて女の子から「撮影するときは緊張しますか?」と聞かれると、阿部「初日は緊張することが多いです。でも緊張はするけどいい緊張感を常に持ちながら楽しくやっています。」と役者としての緊張との向き合い方を明かし、瀬々は「僕はあまり緊張しないですけど、役者がいい芝居ができますようにと祈ってます。」と監督ならではの撮影時の心持を語った。
続いて「夕なぎ(小料理屋)での安田顕さんのテンション高いシーンや、阿部さんがお酒を吹いちゃうシーンでの心境や監督の演出を教えてください。」という質問には、阿部「現場に入らないとわからないことが多いんですが、安田君の最初の殴りがものすごく痛くて、目が覚めるようないい本気を感じて最後までテンションを持って行けたので感謝しています。お酒を吹いたシーンはコロナもあったので、強いお酒なら吹いても何とかなるかなと思って自分で強いお酒を持ち込んでやってました。」と驚きの舞台裏を明かすと、これには監督も「阿部さんの吹いたシーンは凄かったです(笑)」と阿部の役者魂に感服していた。
さらに男の子からの「一番心に残っている場面はどこですか?」という質問には、阿部「息子のアキラとお風呂に入るシーンで、一回潜るんでテルマエ・ロマエと同じにならないようにと思って望んでいました(笑)」と語り会場を沸かせた。さらに劇中でアキラが風邪を引いた時にヤスが桃の缶詰を買ってきて食べさせるシーンが好きだったという男の子に、阿部から「風邪をひいた時にお母さんは何か出してくれる?」と逆質問する場面も。劇中と同じようにフルーツだという回答に阿部「やっぱりそうですよね。」と時代が経っても変わらない親子間のやり取りに納得している様子であった。
続いて「映画の中でお酒飲むシーンがありましたが、阿部さんは普段はお酒飲んでますか?」という質問には阿部「家で自分がCMに出ているお酒飲んでます。昨日も飲んでました(笑)」と茶目っ気たっぷりに語り会場は暖かい笑いに包まれた。
最後に「撮影中に一番大変だったできごとは何ですか?」と聞かれると、瀬々「ラストの淡路島での海のシーンで、撮影時はものすごく海が荒れて風も強く大変でした。でも結果として風で海が光って、とてもいい画が取れたと思っています。」というラストシーンの撮影秘話を明かし、阿部は「基本的に全部楽しかったんですけど、広島弁のニュアンスを間違わないように意識してやっていました。また子供時代のアキラを演じる子役の子の緊張をほぐしてあげられるように色々意識しましたけど、そこも含めて楽しくできました。瀬戸内海は穏やかで気候も良かったので、自然と街の人の暖かさに包まれながら本当に楽しく撮影できました。」と撮影時の思い出を振り返った。
最後の挨拶では、瀬々監督は涙ぐみながら「この映画は人と人の繋がりを描いていますが、今日も映画を観た皆さんと時間を共有できて非常に嬉しいです。」と感謝を述べ、阿部「この映画をやれて良かったなと思っています。この映画に出演を決める時に瀬々監督ならと言わせて頂いて、瀬々さんはこういう作品を撮られたことってあまりないと思うので監督にとっても特別な作品になったのであれば幸せに思います。現場は瀬々さんを親父のようにキャスト、スタッフ一丸となって作っていました。今日は小さいお子さんもいらっしゃって、こうやって僕みたいな人間が前でしゃべっていることが一生の思い出になってくれたら嬉しいなとも思います。今日は皆さんに映画を観て頂けたこと嬉しく思っています。まだまだこの映画には力がありますので、応援してくれたら嬉しいです。」と感謝を述べイベントを締めくくった。