第38回サンダンス映画祭でプレミア上映され話題を呼んだ北欧発のイノセントホラー『ハッチング―孵化―』が、4月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ他にて全国順次公開となる。
今年1月下旬に開催されたサンダンス映画祭のプレミア上映で世界を驚愕させたその作品は、不穏でありながらも美しさを感じさせた。北欧フィンランドで暮らす、幸せな4人家族。だが、それは表向きの姿。少女が孵化させた卵が、絵に描いたような幸せな家族のおぞましい真の姿をさらしていく―。サンダンスでのワールドプレミアを経て、3月に本国フィンランドで公開されたばかりの注目の最新作だ。主人公の少女ティンヤを演じるのは1200人のオーディションから選ばれたシーリ・ソラリンナ。母親を喜ばせるために自分を抑制する、この年代特有の儚さやあやうさを、初演技ながら見事に演じきっている。母親役はフィンランドで多くの作品に出演するソフィア・ヘイッキラ。理想の家族像を作り上げ、娘を所有物として扱う自己中心的な母親を演じている。メガホンをとるのは多くの短編作品を世界の映画祭に出品して高い評価を受け、今回が長編デビュー作となる新鋭女性監督ハンナ・ベルイホルム。北欧ならではの明るく洗練された一家の中に潜む恐怖を見事に切り取ってみせている。
日本公開を控え、多方面で活躍するトップランナー達から、映画への期待が高まる絶賛コメントが続々寄せられている。ベルイホルム監督は、本作の根底にあるものとして「母と娘、そして母親が自分のありのままを愛していないと感じる娘の物語」と語る。そしてそれを伝えるために採り入れたのがホラーという手法であるという。監督は、「ホラーの要素をはじめ映画の中で起こる全ての出来事が、この母と娘の物語を本質的に伝えるものでなければならない。だから、映画の中でデザインされたものは、常にこの1つのストーリーと繋がっている」とこだわりを語る。
そんな本作にコメントを寄せたのは、映画好きとして知られる川上洋平 [Alexandros] (ミュージシャン)や野水伊織(声優)のほか、氏家 譲寿(ナマニク)(映画評論家/文筆家)、杉山すぴ豊(アメキャラ系ライター)、DIZ(映画アクティビスト)、人間食べ食べカエル (人喰いツイッタラー)と、映画分野の多方面で活躍する面々から、同じ映画について評しているとは思えないほどに、本作が持つ多面的な魅力にフィーチャーした想像力をかき立てられるコメントが集まった。
『ハッチング―孵化―』に寄せられた絶賛コメント(五十音順)
歪んだ母性に育てられた子が異形(エゴ)を生む。
だが、異形が愛情を求める姿に胸を打たれる。
それは吐瀉物でさえ美しく見える世界。
我々の心を引き裂く、歪んだ映画だ。
――氏家 譲寿(ナマニク)(映画評論家/文筆家)
ファンタジーとリアリズムを行き来する恐怖に飲みこまれる
明るさの中に潜む闇を描いた北欧ならではのダークファンタジー
――川上洋平 [Alexandros] (ミュージシャン)
“フィンランドの妖精と美少女の出会いを描くファンタジー”になりそうな物語を美しくもグロいモンスター映画に仕上げた監督のセンスに脱帽。そして最も怖いモンスターは実はクリーチャーではない。一筋縄ではいかない悪夢です。
――杉山すぴ豊(アメキャラ系ライター)
北欧から奇才が孵化してしまった…。
幸福の内側に戦慄し、驚愕のラストに
感情がぐちゃぐちゃにされ、余韻から抜け出せない。
観たら最後、幸せそうな家族を見かけると
ゾッとしてしまう呪いにかかる。
――DIZ(映画アクティビスト)
少女と謎生物の心温まる交流劇かな?と思いきや、待っていたのは心の底まで凍り付くおぞましい展開。一見幸せな家族が抱える歪みが、孵化と共に最悪の形で噴出する。後もう一つこれだけは言いたい。こんなに嫌な餌やりシーンは見たことがない!!
――人間食べ食べカエル (人喰いツイッタラー)
母親とティンヤ、ティンヤと卵。
ふたつの親子関係から見えるのは、「子どもはいつだって、親に愛されようと懸命なのだ」ということ。
だからティンヤも孵化したものも“母親”のためにと尽力する。
それなのになぜ、頑張れば頑張るほど幸せから遠のいてしまうのか。
終始涙が胸につかえて痛かった。
“母と娘”というオルターエゴを巡る、愛の物語。
――野水伊織(声優)