松竹キネマ合名社の設立、そして数々の名作を創り出した蒲田撮影所の開所を迎えた 1920 年から、日本映画史を飾る傑作、ヒット作の製作、配給、興行を続け、2020 年松竹映画は 100 周年を迎えた。本作は、そんな松竹映画 100 周年を記念した作品となる。日本映画界を代表する巨匠・山田洋次を監督に迎え、これまで数々の文学賞を受賞してきた人気小説家・原田マハ原作の『キネマの神様』だが、幾度の公開延期を経て、ついに 8 月 16 日(金)より劇場公開を迎えることが決定。そしてこの度、公開に先駆けて 3 月 29 日(月)に豪華キャスト陣が集結した<完成報告会見>が実施された。登壇者は、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎を筆頭に、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子とベテラン俳優らが勢揃い、さらには、山田洋次監督も登壇し 70 年近く日本映画の最前線を走り続ける唯一無二の存在として最新作に込めた熱い想い、さらに映画に対する強い愛を語った。
本作は 1950 年~60 年代の日本映画の黄金期と現代を舞台に、“映画の神様”を信じ続けた主人公・ゴウが時代を超えて織り成す“夢”と“愛”と“奇跡”に満ちた感動の物語が描かれる。志村けんの遺志を継いだ沢田研二とダブル主演を務め、撮影所の助監督として青春の日々を送る若き頃のゴウを演じた菅田将暉。彼は長期の撮影中断を経てついに完成を迎えることができた本作について「この 1 年、色んなことがありましたが思い出の詰まった作品になりました。」と並々ならない想いと喜びを明かす。今回初めての山田組に挑戦した永野は撮影所近くの食堂・ふな喜の看板娘である淑子を演じているが「毎日緊張と勉強の連続で、今までになかった経験ができました。」と明かすと、すかさず山田監督から「本当に緊張していた?(笑)」と楽しいツッコミが入り、会場を沸かせた。
撮影所で映写部として働くテラシン演じる野田は「山田監督はアイデアが豊富で、その場でスタッフも瞬発的に演出作業をしていた」と本作の撮影裏話を明かした。さらに、劇中にあるギターを弾くシーンも「3日前くらいに言われたんです」と、監督による突然のアイデアだった事を暴露すると、山田監督は「もっと前から言ってたんじゃない?(笑)」と笑いながら返答した。一方、現代のテラシンを演じた小林とは“そっくり”だと試写を観た関係者の中では話題となっているが、小林も「嬉しいですね。野田さん演じるテラシンの演技を見た時に、(演技に対する)気持ちは僕と一緒だと思いました。」と野田の演技を絶賛。
夫婦となったゴウと淑子の娘・歩を演じた寺島しのぶは「(山田組への出演は)待ち望んでいた出来事だったので、何が何でも出たいという思いを伝えましたね。」と初の山田組となった印象を語る中、ゴウの妻となった現代の淑子を演じた宮本信子はなんと本作が 50 年ぶりの山田組となり、「50 年は長いですよね。最初にお会いした当時はすごく怖かったのですが、本作で久しぶりお会いして長い年月が経ったのだと思いました。」と、ベテラン俳優らがそれぞれの想いを語ったのである。
100 周年記念作品にふさわしい豪華なキャスト陣が集結しながらも長期の撮影中断など、あらゆる困難が降りかかった状況下でも前を向き、“奇跡”の積み重ねでついに完成を迎えた本作。山田監督は「本作は 8 月の上映になってしまいましたが、多くの方にこの作品を映画館で観ていただきたいです。」と語る。また、作品が完成するまでの長い道のりを振り返りながらも、これから映画界がコロナを乗り越えて、この『キネマの神様』が劇場映画復活へのバトンになってほしいという希望を込めた事を、映画人として熱を持って語っていた。
会見中には、“キネマの神様”がいることを信じて劇場公開に向け歩み始めた彼らの本作へかける情熱に、胸が熱くなる【特別映像~完成までの物語~(https://youtu.be/J_D6wO-0js0)】が公開され、会場が優しさと未来への希望に満たされていた。
▼山田洋次監督
Q. 本作は企画が始動してから完成まで非常に長い道のりだったと思います。今、改めて振り返ってみていかがですか?
A.本読みをした後に主役(志村けん)がお亡くなりになってしまうという出来事は初めての経験で、その時のことを今でも思い出します。混乱してしまい、どう
すればいいか不安にもなってしまいましたが、色々な考え方をして新たな魅力のある作品になったと思います。
Q. 沢田研二さんが演じたゴウはとても素晴らしいと試写の感想で話題になっているそうですが、そういった声を聞いていかがですか?
A.志村さんとの友情があったから、快く引き受けて下さいました。表には見せないけど、緊張していたと思います。菅田さんも沢田さんも二枚目だから共通点
があって良かったと思いますし、彼(沢田研二)がダメな男・ゴウを鮮やかに演じてくれました。
Q.本作を楽しみに待っている方へのメッセージをお願いいたします。
A.映画人にとっての大きな課題は、このコロナの時代を通り過ぎてしまうと映画を配信で見る習慣がついてしまうのではないかということですね。ですが、そん
なことはないと思っていて映画は消えないと思っていて、映画館の中で語り合い、拍手したり、楽しく見るものであり続けたいと思っています。
▼菅田将暉
Q.沢田研二さんが志村けんさんの遺志を継ぎ、ようやく作品が完成を迎えることができましたが、完成した映画を見ていかがでしたか?
A.沢田さんのゴウは、僕の演じているゴウよりもたくさん動き回っていて、パワフルで、チャーミングな、ダメ父親だけど色気のある魅力的なゴウだと思いました。
Q.撮影中は山田監督の映画への情熱や執念を実感された出来事はありましたか?
A. 撮影のシステムが執念の塊のようでしたね。他の映画の現場とはまるで違う段取りになっていますし、時間の使い方も違いますし、山田監督が考え事をし
て1~2 時間立っていることもありました。それだけスタッフのことも信頼していますし、山田監督がかける魔法の空気がすごいなと思いました。
Q. 「映画館」という場所はどのような存在ですか?
A. 今となっては職場みたいな変な緊張感もありますが、映画を観ているといつの間にか別の世界に行ってしまいます。
Q.本作を楽しみに待っている方へのメッセージをお願いいたします。
A.まさか山田洋次監督作品の真ん中に立たせていただけるとは思ってもいなく、本来であれば…という出来事がたくさんありましたが、「今、完成しました」と
いうことを一番に伝えたいです。思い出の詰まった作品になりましたし、たくさんのメッセージが込められている映画になっていますので、どうぞよろしくお願いいた
します。
▼永野芽郁
Q. 今回初めての山田組ということでしたが、撮影はいかがでしたか?
A. 毎日緊張と勉強の連続ではあったのですが、現場に行った時のワンシーンにかける皆さんそれぞれの想いがこもっていて、今までに体験したことのない経験
が多かったです。
Q. 「映画館」という場所はどのような存在ですか?
A. 初めて自分が出てる映画を観た時は不思議な気持ちで、「私はこの世界で頑張っていけるのか」と思った気持ちを今でも映画館に行った時は思い出しま
す。不思議な存在です。
▼野田洋次郎
Q. 丁度先日映画をご覧になったとのことですが、完成した『キネマの神様』をご覧になっていかがでしたか?
A.素晴らしかったです。僕が演じたテラシンの未来を小林稔侍さんに演じてもらったことに感動しています。あとは撮影中のことを思い出しました。山田監督は
アイデアが豊富で、その場でスタッフも瞬発的に演出作業をしていた時に右往左往していた自分がスクリーンに映っているようでしたね。山田組に翻弄されま
した。
Q. 「映画館」という場所はどのような存在ですか?
A.映画を観終わると、何百人の全く知らない人たちと同じ経験や冒険をしてその日を終えてくということが素敵だと思っている自分がいます。その日のことが人
生に残っていること、偶然のことさえ奇跡だと思います。
▼寺島しのぶ
Q. 今回山田組初参加となりますが、初めての山田組はいかがでしたか?
A. 待ち望んでいた出来事だったので、お話しいただいた時は色々なことが重なっていた時期でしたけど何が何でも出たいという思いを伝えましたね。山田組と
同じ空気を吸えるだけで毎日幸せでした。
▼小林稔侍
Q. 本作で二人一役を演じた小林さんと野田さんが本当にそっくりだと話題ですが、映画をご覧になっていかがでしたか?
A. 嬉しいですね。野田さんとの初対面は山田監督が開いてくださった食事会でしたが、お互い自己紹介をしただけで 2 時間くらい過ぎてしまいました。です
が、野田さんが演じるテラシンの演技を見た時に気持ちは僕と一緒だと思いましたね。
▼宮本信子
Q. 今回、50 年振りの山田組でしたが、久しぶりの山田組はいかがでしたか?
A. 50 年は長いですよね。最初にお会いした当時はすごく怖かったのですが、本作で久しぶりお会いして長い年月が経ったのだと思いました。本作のセットで
雪を見た時に、「あ~、映画っていいな」って感動したことを覚えています。キャスティングしていただいてありがとうございました。
Q. 「映画館」という場所はどのような存在ですか?
A. 私にとって無くてはならないものです。「こういう違う世界を見せてくれるんだ」とワクワクしますね。楽しい、嬉しい、悲しい、と色んな表情ができる存在です。