『EUREKA ユリイカ』、『東京公園』などで世界的な評価を受ける青山真治監督の7年ぶりの長編映画『空に住む』の公開を記念して10月24日(土)、東京・新宿の新宿ピカデリーにて舞台挨拶が開催され、青山監督をはじめ、主演の多部未華子、共演の岸井ゆきの、美村里江が出席した。3人の女優陣の相手役を務めた岩田剛典、大森南朋、鶴見辰吾は欠席となったが、サプライズでビデオメッセージ&“リモート“による花束のプレゼントが行われ、会場は盛り上がりを見せた。
前回の舞台挨拶は、無観客でYouTubeチャンネルでの配信のみで行なわれたが、この日は観客を前にしての劇場での舞台挨拶が実現。多部は多くの観客で埋まった客席を見やり「本当に映画館に足を運んでくださること自体がありがたいのに、こんなにたくさんの方が来てくださって、本当に嬉しく思います」と感激の面持ち。
岸井も「この時期に映画が無事に公開できて嬉しいです」と喜びを語り、美村は「ちょっと前から客席が1席空けではなく、満席でOKになったんですが、改めてみると本当にありがたい景色だなぁ…と」としみじみと感慨を口にする。
演じた役について自分と重なる部分や見習いたい点、アドバイスしたいことを尋ねると、多部は、自身が演じた直実との共通点として「ペットを飼っていること」を挙げ、劇中でペットロスが描かれることに言及。「愛する相棒、パートナーがいなくなった時の喪失感や絶望感…。私はいまはまだ経験していないけど、直実の行動力だったり、自分もそうなるのか? 想像できない。大事な存在が近くにいて、それがなくなったときの行動の仕方、今後、自分も経験すると思います」と愛するペットの存在に思いをはせる。一方で、直実から見習いたい点については「淡々としているように演じたんですが、(岸井さんが演じた愛子の)出産の時とか、突然、力強くなるんですね。淡々としているけど大事な時に出る底力は私もほしいです」と語った。
同じ質問に岸井は「愛子は強くあろうとして、自分を納得させるために強さを自分に押し付けているように見えるんですけど、近くにいる友人たちは、強がってるとわかっちゃう。それが友人を心配させてるぞと教えてあげたい。私も、もしかしたら強がっちゃうタイプなので(苦笑)」と自らを省みつつ語る。
美村は、自身が演じた明日子を「善意で直実を追い詰める、なかなか厄介な方(笑)」と語り「こうなっちゃいかんなと(笑)。自分がいいと思って、誰かに何かを迫ってはいけないなと思いました。体を動かすか、地域のボランティアなどで発散するか、本を読むなら古典で『人間の幸せってなんだっけ?』と考えてほしい」とアドバイスを口にした。
また、満たされないモヤモヤを感じている登場人物たちにちなんで、自身の「もやもや解消法」を尋ねると、青山監督は「最近は、朝、5時半くらいから自転車で近所を走っています。ストレス解消法としてはいいですよ。1日が有意義に過ごせます」と明かす。
美村は「頭を使いすぎても体を使いすぎてもダメ。頭が疲れてるときは体を動かして、身体がぐったりしているときは、頭に何かを入れるようにすると整います」と語る。岸井は「私はどんな時でも映画を見ます! 満たされないときも満たされている時も、哀しいときも楽しいときも『映画を見よう!』って思います」とのこと。ちなみにもやもやしている時に見る映画ジャンルを尋ねると「宇宙に行きます!」と壮大なスケールの映画をおすすめしてくれた。
多部は「私は単純で、友達としゃべるに尽きます。モヤモヤが始まった瞬間に友達に連絡します! 答えは出なくてもいいんです。聞いてもらえれば、解決しなくてもスッキリします」と微笑んだ。
また、女優陣にそれぞれ劇中で相手役を演じた男優陣の印象を尋ねると、多部は岩田剛典について「初めてお会いしたのが、撮影の始まるちょっと前の監督に質問をする機会だったんですけど、私は何を聞いたらわかんないままその場にいるくらいフワフワしてたんですが、岩田さんは台本に付箋をいっぱい貼っていらして、『そんなに聞くことあるんだ!?』と思いました。それだけ台本を読み込んでいて、監督ともすごくコミュニケーションをとってて、真面目で勉強熱心な方だなと。私にない部分をたくさん持っている方で、焦りました(苦笑)」と称賛する。
岸井は、大森南朋とのそばを食べるシーンでの共演を述懐し「(画として)湯気がほしいということで、熱々のそばを2人で食べたんですが、大森さんから近くのおいしいおそば屋さんのことを教えていただきました。『そば好きなの? いいとこあるよ』って。携帯にメモしたんですけど、その携帯を替えちゃって…」と大森とのやりとりを明かしたが、青山監督から「そば屋さんで(別の)そば屋の話を…? やめなさいよ!」とツッコミが飛び、会場は笑いに包まれる。
美村は、過去に何度も共演している鶴見辰吾について「先輩ですが、鶴見さんのさわやかでいい人の部分と、この人、本当は裏で何してるんだろう? と言うところの両方が好きなんです。今回は、わりといいダンナさんという感じでしたが、もしかすると誰にも言えないアコギな商売をしているのかも…とかってに明日子の中で思っていました。ただの“いい人”じゃないところが素敵でした」と語った。
この日は、感謝の思いを込めて多部から青山監督に花束が贈呈されたが、さらに男性陣3人から、女優陣に思いのこもった花束とビデオメッセージが到着! 多部は、劇中で岩田が演じた時戸が、エレベーターで直実に贈った真っ赤な花束がプレゼントされ、多部は「ありがとうございます!」と笑顔を見せていた。
最後に青山監督は「楽しい映画だったと思いますがいかがだったでしょうか? 静かに見ている中にも、大きな空にいるような雄大さがある楽しさだったと思います。人に言うときは『デカい映画だった』と言ってください!」とアピール。
多部は「明日も、1週間後も、1年後もみなさまの印象に残っている映画になっていたらと思います。素敵な曲を聞いて、映画の1シーンを思い出してくだされば」と呼びかけ、温かい拍手の中で、舞台挨拶は幕を閉じた。