「小説では書けなかったことが映画では描かれている」原作者・桜木紫乃、映画ならではの表現に大絶賛!「必ず誰かの背中を押してくれる、温かく包み込んでくれるような映画」『ホテルローヤル』トークイベント

「小説では書けなかったことが映画では描かれている」原作者・桜木紫乃、映画ならではの表現に大絶賛!「必ず誰かの背中を押してくれる、温かく包み込んでくれるような映画」『ホテルローヤル』トークイベント
提供:シネマクエスト

日時:9月25日(金)
場所:サツゲキB1F シアター4
登壇者:桜木紫乃
MC:熊谷百合子

映画『ホテルローヤル』が11月13日より全国公開となる。原作は累計発行部数95万部を超える桜木紫乃の直木賞受賞作。メガホンをとるのは、『百円の恋』や『嘘八百』、昨年のNetflix国内視聴ランキング1位を獲得した「全裸監督」など精力的な活動を続ける武正晴。脚本は、連続テレビ小説「エール」を手がけた清水友佳子。主人公であるホテル経営者の一人娘の雅代には、映画やドラマで圧倒的な演技力と存在感を示す波瑠。桜木自身を投影した役を、繊細さの中に意志の強さを感じさせて好演。共演には松山ケンイチ、安田顕、余貴美子、原扶貴子、夏川結衣、伊藤沙莉、岡山天音ら実力派俳優陣が名を連ねる。誰にも言えない秘密や孤独を抱えた人々が訪れる場所、ホテルローヤル。そんなホテルと共に人生を歩む雅代が見つめてきた、切ない人間模様と人生の哀歓。誰しもに訪れる人生の一瞬の煌めきを切り取り、観る者の心に温かな余韻と感動をもたらす。本作の舞台となった北海道で、初の試写会を実施。原作者である北海道出身の桜木紫乃が登壇し、トークイベントが開催された。

出来上がった映画を観て、「武監督ならではの音楽と映像の融合でした。いち観客として楽しみました。」と桜木。「全編がお気に入りです。その中でも特にお気に入りなのは、5千円を握ってホテルローヤルを訪れる夫婦のエピソードのシーン。私が小説を書いた時は冷めた目で深刻なフリをして書いていましたが、映画ではカメラを少し引き、そこを面白く描いてくれて、なおかつホロリとさせてくれて、原作とはまた別のものを見ている感覚で、とにかく身につまされました」と印象的なシーンを明かした。本作は、桜木の実家だった実在のラブホテルが舞台で、桜木自身、主人公の雅代と同じように学生の頃から家業の手伝いをしていた。その意味で雅代という役は桜木を投影した役であると言える。そして、波瑠演じる雅代の眼鏡と白シャツというルックが桜木を彷彿とさせると関係者の間で話題となっている。そのことについて、「やりすぎでは?と思うほど、私もそう思いました(笑)眼鏡をかけて白シャツって、世の中に一番出回っている私の写真によく似ているんです。武監督にその真意について聞いたら、監督は、『いや、違うんだ。眼鏡をかけさせたのは、女性が眼鏡を外すところを撮りたかった。白シャツは、ホテルのシーツが白で、キャンバスも白だから』と胸を張られてそうお答えになって…決して私に寄せたのではないそうです。私の過剰な自意識がそこに残ってしまいました(笑)」と、雅代のビジュアルについての真意を明かし、会場の笑いを誘った。

桜木の念願が叶う形で実現したのは、雅代の父を演じた安田顕の出演。「何年か前に安田さんが『俳優 亀岡拓次』の舞台挨拶で北海道にいらっしゃった時、ご挨拶の際に『私の原作でお話がいった時にはよろしくお願いします』と申し上げたら、今回本当に受けていただけました」と喜びを語った。従業員役の原扶貴子には、自身の経験を活かし、ホテル従業員としての役作りのポイントを伝授したそう。「原さんに、『掃除の時に気をつけていたことはありますか?』と聞かれ、『バスルームを掃除する時にアカがついていないか指で確かめていました』と告げたところ、原さんが実際に演技に取り入れてくれました。私の経験がこんな風に役立つんだなと感慨深くなりました」と裏話を披露した。

最後に「私が原作では書かなかったことが、映画には描かれていると思います。自分が無意識のうちに待っていた言葉だとか、待っていた場面が映画で描かれていると思うのです。その場所で生活する人に寄り添った、それでいて暖かく包み込んでくれるような映画に仕上がっていると思います。それは小説ではしてこなかったことだし、私の筆では出来なかったこと。是非、映画と小説の両方を楽しんでいただけたら嬉しいです。必ず誰かの背中を押してくれる映画になると思います。一歩踏み出したい人、前に進みたい人、前向きに“逃げたい人”に届いたらいいなと思います。」と熱いメッセージを送った。

最終更新日
2020-09-28 10:00:43
提供
シネマクエスト(引用元

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