日時:9月2日(月)
場所:ユーロライブ
登壇者:燃え殻、今泉力哉監督
人気作家・伊坂幸太郎“初”にして“唯一”の恋愛小説集で、すでに51万部を売り上げるベストセラー「アイネクライネナハトムジーク」(幻冬舎文庫)が待望の映画化、9月20日(金)全国公開となる。Twitterで人気を集め、作家・コラムニストとして活躍する燃え殻をゲストに迎え、本作の監督を務めた今泉力哉監督とのトークショーが開催された。
満員の会場に登壇した今泉力哉監督と燃え殻さん。燃え殻さんが「三浦春馬さんではなくて申し訳ないと思いながら(笑)参りました。」と話し、早速会場を沸かせ、イベントはスタートした。
以前から親交のある2人に出会いについて尋ねると、今泉監督が「このビルの下で初めてお会いしましたね。接点という意味ではツイッター上でお互い面識があって、そこで燃え殻さんが自分の映画を見てくれているんだというDMのやりとりがあって。」と話すと、燃え殻さんも「今泉さんの作品は全部見ていて、そんな時に『退屈な日々にさようなら』のパンフレットにコラムを書いてもらえませんか、っていうありがたいお話をもらって。その時に今泉さんの変な指令が出て、「会うのはやめましょう」って今泉さんが仰ったんですよね、僕は普通の人間なので“ご挨拶させてください。お会いしましょう。”と言いましたよ。(笑)って言っていたのにいきなり会っちゃったんですよね。でも今泉さんが“あ!燃え殻さん!”という感じだったので、その後色々お話ししたのに、なんかモジモジしていて。僕はこんなに出し引きがよくわからない人初めて会いましたよ。(笑)」と今泉監督の独特のエピソードを披露。今泉監督は「会っちゃったけど会わないほうがいいかなと思って。(笑)」と持論を展開した。
映画の感想を尋ねられると、「良い映画とか悪い映画とか分からないけど、今でも飲み屋で話す映画ってあって。岩井俊二さんの『Love Letter』とかウォン・カーウァイの『天使の涙』とか。『アイネクライネナハトムジーク』も僕は10年くらいたっても渋谷の飲み屋で、多部未華子さんと三浦春馬さんのシーンの話をずっとすると思うんですよ。そういうのが、僕の中でいい映画で。」と燃え殻さんが印象に残ったシーンを話すと、今泉監督からそのシーンがアドリブからの流れであったことが明かされると、燃え殻さんはさらに「天才じゃないですか。」と大絶賛。今泉監督は続けて、「多部さんに気持ちを伝える大事なシーンがあって、その時に三浦さんに“もっと多部さんに頼ったらやりやすいと思うよ”って話したんです。“もっと多部さんを使ってください。”って。三浦さんならもっといけると思ったんですね。三浦さんがその時の話を取材の時にしてくれて、今やっているドラマの現場でも相手とやることに気をつけるようになった、って言ってくれてたんです。三浦さんはすごく真摯に相手とやらなきゃいけないと思った、って言ってくれて。」と三浦さんの現場でのエピソードを披露した。
続いて伊坂幸太郎さんの原作を今泉監督が映画化することについての話になると、燃え殻さんが「今泉さんが伊坂幸太郎さんの作品をやるってなった時に、伊坂さんの小説も全部読んでて、今までの映画化作品も全部見ていて、今泉さんがどっちに触れるんだろうなって思ってたんですよね。その中で『アイネクライネナハトムジーク』でも、絶対におとぎ話にしないぞっていう気概が感じられて。今泉さんの映画になっていたなと思いました。」と“今泉監督”らしさを語ると、今泉監督は「ハッピーエンドもそうですが、映画って映画の中で終わらせることができるんですけど、この作品に限らず、現実世界との地続きさが欲しいと思っていて。あの2人がその後うまく行くか分からないし、本当に隣に住んでいる人の話にしたいという思いがあります。伊坂さんの小説って、小説でしかできない魅力的な言葉とか、小説しかできないキザな特徴的なセリフがあって、現実世界で生身の人間が言うと浮いちゃうかもと思って。言う人を集約するとリアリティも保てつつ、伊坂さんの面白さも保てるんじゃないかと思ったんですね。今回は一真(矢本悠馬)には言わせて、他の人には言わせないっていうのを決めて行くことで、街中で、映画を観終わって、自分たちの話みたいに思わせられたらなって思いました。」と今作での演出を明かし、会場からも納得の声が上がった。
続いて燃え殻さんに映画に登場する印象的なキャラクターに関して尋ねると、「多部さんが可愛すぎて・・。」と、しみじみと話し会場の笑いを誘うと、「三浦さんがかっこいいのに、だんだん普通の人に見えてくる演技でしたね。そこが三浦春馬さんのすごいところだなと思って。この人かっこいいなって思うと、(映画の中で物事がうまくいくと)“そりゃそうだろう”って思うじゃないですか。(笑)なんとなく、うまくいかないんじゃないかって心配になっちゃうんですよ。」と三浦さんが演じる普通の会社員・佐藤を大絶賛。今泉監督も「三浦さんは本当に真面目な方なんですよね。お芝居するの大好きな方だと思うし。衣装合わせでお会いしたときも、佐藤って普通の人で。下の名前もないんですね。その辺も三浦さん考えてくれてまして、すごい安心しました。現場でどうやって佐藤を作るかも話せたし。」と、絶大な信頼感をのぞかせた。一真を演じた矢本さんに対しても、「自由すぎて最高でした。立ち位置とかも、“自分の役はここにいるべきだと思う”って考えてくれてて。」と今泉監督が話すと、燃え殻さんも「(一真が店長をしているような)あんな居酒屋行ったことあるんじゃないかって思いましたよ。」と、ここでもすぐそばにいそうな登場人物に賛辞を送った。
そんな数多くの登場人物が出演する本作に対し、燃え殻さんは「群像劇として平等だなって思いました。色々なウェイトはもちろんあると思うんですが、なんとなく愛が平等にあるような気がして。平等にしたいんだろうな、って思いました。」と群像劇ながら今泉監督らしさが感じられたと話すと、今泉監督も「主人公のために登場人物が存在している、となるとある種ファンタジーになるので、そうはしないように気をつけました。」とうなずいた。
最後に今泉監督から「本日はありがとうございます。感想など周りの方に伝えていただければと思います。ワンクリックで得られるネットの情報ってワンクリックで忘れちゃうと思うので、口から隣の人、家族、友達にこの映画の感想を伝えてもらえると、この映画の一番の応援になるかなと思います。SNSとかもいいんですが、口コミでも、気に入っていただけたら広めていただけるとありがたいです。ありがとうございました。」と話し、イベントは幕を閉じた。