9月1日(土)より、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開となる映画『寝ても覚めても』。この度、8/29(水)日本外国特派員協会にて試写が行われ、濱口竜介監督、ヒロイン朝子を演じた唐田えりかが記者会見に登壇した。
唐田「いまだに、“寝ても覚めても”夢をみているようです」
本年度のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された『寝ても覚めても』。濱口監督は、39歳の若さ、初の商業映画で、唐田は初の本格演技作でのカンヌ出品という快挙を成し遂げた。世界中で注目される“若き巨匠”濱口監督の作品をいち早く観ようとつめかけた外国人記者たちの熱気の中、試写後の記者会見に濱口監督とヒロイン唐田えりかが登場。「カンヌはどうでしたか?」の質問に、濱口監督は「映画好きとして今まで見てきた場に自分が立ててとても興奮しました」、唐田は「初めての大きな役で、まさか自分が行けるとは。いまだに”寝ても覚めても”夢を見ているようです」と、共に初のカンヌ映画祭での覚めやらぬ興奮を語った。外国人記者から、本作に登場するキャラクターについての質問が飛び交い、朝子が運命的な恋に落ちたミステリアスな麦(東出)の唐突な行動について、いかにこの人物によって物語が大きくうごめくのか、仲本工事演じる平川の言動について、いかに彼が日本人の持つ一つの考え方を代表しているかなど、丁寧に濱口監督が解説。また、印象に残った台詞を問われ、「全部の台詞が愛おしいです」と唐田が本作への愛を語った。
「キスまで違う。」同じ人なのに全然違った東出昌大一人二役。
ヒロインの朝子として、一人二役を演じた東出昌大と共演した感想を問われた唐田。「麦の時の東出さんは、危うくてすぐに消えてしまいそうな儚さがあって、一緒にいるのにいないような感じでした。一方で、亮平の時は、愛に包まれているような感じで、同じ人なのに全然違いました」と語る。さらに「キスも違った」という。東出の演じる全く別の二役と共にいることで、全く違う感情が自然と生じたようで、「すべて東出さんに助けられました」と感謝を述べた。また、後半に観客を驚かす朝子の“ある決断”をどのような気持ちで演じたのかを尋ねられ、「濱口監督からは、現場に入る前から“何も考えなくて良いです。とにかく相手の芝居を見て聞いてください”と言われていたので、現場では完全に“無”の状態でした。(その決断の瞬間も)計算などなく、その時、そうするしかなかった、気づいたらそう決まっていた、という感じで、反射的に体が動いていました」と、いかに唐田自身が自然と朝子と同化していたかをうかがわせた。
濱口監督「彼女は朝子だった。ただ唐田を撮っていたらカンヌまで行っちゃっいました。」
原作も、共同脚本も女性である本作。監督はどのようにヒロインの物語を撮っていったのかについて、「この物語は、女性でないと理解できないわけではないと思っています。自分も、朝子のように行動したいと思って撮りました」と濱口。「映画で女性を描くということは、女性を撮るということです。唐田さんを撮っていれば、自然と朝子が描けました。彼女はまさに朝子でした。現場で非常に高い集中力で朝子を演じる彼女についていったら、カンヌまで行っちゃいました」と唐田を撮ることができた喜びと全幅の信頼を露わにした。
カンヌ国際映画祭に続き、今後もトロント、ニューヨーク、サンセバスチャンと各国での映画祭出品が決まっており、また、すでに世界20カ国以上での公開が決定している本作。ますます世界を席巻中の『寝ても覚めても』が、いかに監督と役者の信頼関係によって生み出されていったのかが垣間見える会見だった。