日時:8月24日(木)
場所:六本木アカデミーヒルズ
登壇者:クリストファー・ノーラン、岩田剛典
『ダークナイト』『インセプション』と、新作ごとに圧倒的な映像表現と斬新な世界観で、観る者を驚愕させてきたクリストファー・ノーラン監督が、実際に起きた史上最大の救出作戦を描いた大傑作が誕生! 360°全方位から迫るサスペンス、究極の映像体験『ダンケルク』が、9月9日(土)より日本公開となる。
海の町、ダンケルク。追い詰められた英仏軍40万人が撤退を決断。若き兵士トミーは、絶体絶命の窮地から脱出できるのか!?世界が嫉妬する才能を持つ、『ダークナイト』『インセプション』のノーラン監督が実話に挑んだ最新作! 民間船もが救助に関わった、史上最大の救出作戦が幕を開ける!
「オスカー候補となるべき今年No.1の映画。(Variety)」、「ノーラン最高傑作。(The Guardian)」など、早くも2018年のアカデミー賞最有力候補の大本命として各海外メディアが一斉に報じている最新作『ダンケルク』をひっさげ、監督・脚本・製作を務めたクリストファー・ノーラン(46)が『インセプション』以来7年振り4度目の来日を果たし、8月24日(木)に記者会見を行った。
世界中で注目されている天才監督の久々の来日記者会見に、マスコミ200名、そしてノーランファン100名が来場。そしてゲストとして、自他共に認める“ノーラン監督の大ファン”であり、『ダンケルク』をいち早く鑑賞したEXILE / 三代目J Soul Brothersの岩田剛典が記者会見に出席。本作を観てノーラン監督について「頭の中を覗いてみたいナンバーワンな人!」と語っていた岩田は、敬愛するノーラン監督との初対面に「ものすごいエンターテインメン。ハラハラドキドキするので、登場人物全員にドラマがあるので人間愛を実感、共感できる作品になっています!」と熱く語った。そして最後にはノーラン監督から、『ダンケルク』のサイン入り完全脚本オリジナル英語本のサプライズプレゼントが! 監督の粋な計らいに「めちゃくちゃ嬉しい! 童心に帰りました!」と喜びを爆発させた。
ノーラン監督:今日はお集まり頂きありがとうございます。今回7年ぶりの来日ですが、再び日本に来ることができて光栄です。日本は一番好きな国の一つです。みなさんに新作をお見せできることワクワクしています。
マスコミ質問:初の実話ということですが、臨場感ある映像に込めたものとは?
ノーラン監督:史実に基づく映画は初めてだったので、リサーチを重ねました。実際にダンケルクにいらっしゃった方々の証言を入念に調べました。観客が、自分がまるで当事者であるかのように感じる、緊迫感あふれる映画を作りたかったので、徹底的に調べました。実際にダンケルクに派兵された方に歴史アドバイザーとして手伝ってもらいました。ご存命の方を紹介して頂き、直接話を聞くことができました。ダンケルク体験を体験した方々から直接話を聞くことができ、心揺さぶられるものがありました。彼らの実際の体験が、この映画に反映されています。脚本を書く上では、そう行った体験談をフィクショナルな人物に語ってもらう手法を取りました。
質問:残虐なシーンがない理由は?
ノーラン監督:それは、ダンケルクが他の戦いと性質が違うからです。これは撤退作戦、逃げていく話なので、サスペンススリラーとしての形をとりました。従来の戦争映画は、いかに戦争が恐ろしいかをホラーとして、時に目を背けたくなるような映像で語ります。『ダンケルク』はサスペンスなので、背けるどころか釘付けになるように緊張感を持たせました。敵も見せてはいません。あくまで爽やかな話であり、ジリジリと迫る敵を存在を感じさせる時間もサスペンス感を担っています。
マスコミ質問:『スターウォーズ』がお好きと聞きましたが、同じフィルムメーカーとしてスピルバーグ監督から受けた影響は?
ノーラン監督:スピルバーグ監督、ジョージ・ルーカス監督の影響は受けています。7歳で見た『スターウォーズ』を観たことは、決定的な出来事でした。のちに映画を撮る人間として影響受けました。本作を撮るにあたって、スピルバーグ監督は『プライベート・ライアン』の35ミリフィルムを貸してくれました。スタッフと観ましたが、未だに名作だと思います。この作品と共通するわけにはいかないと思いました。緊張感にはダンケルクで狙っている緊張感は異質なもの。スピルバーグ監督には水上での撮影で、いいアドバイスを頂きました。また、他にもヒッチコックなど、これまでの監督たちがどうしてきたかを学び、そして自分がどうしていくかを考えるということです。
マスコミ質問:世界中で対立が深まる中、戦うのではなく撤退を描くという点に、監督の思いはありますか?
ノーラン監督:映画の作り手として、世の中で起きていることに影響を受けずにはいられません。多少は反映されていると思いますし、たまたまといったら嘘になりますが、故意にこの作品を作ったということはありません。ただ、全員で協力すべきことの偉大さ、個人ではなし得ないことを全員で力を合わせれば逆境を乗り越えられるというテーマは、イギリスだけでなくどんな文化圏でも共感してもらえるものだと思っています。
ノーランファンを代表して岩田剛典登場
MC:監督にお会いしていかがですか?
岩田:ノーランファンなのですごく光栄です。最初は、実話を元に作られた作品ということで、ノーラン監督っぽくないのかと思いました。今までの作品とテイストは違うものの、そこはノーラン節が全開。作品が始まって5秒でダンケルクの浜辺に連れていかれました。自分が戦場にいるかのようなVR体験。映画ならではの表現に最後までこだわってらして、最後まで秒針の音が印象的でした。戦争映画というと食わず嫌いの方もいるかと思いますが、ものすごくエンターテインメンでハラハラドキドキするので楽しめるし、登場人物全員にドラマがあるので人間愛を実感、共感できる作品になっていると思います。
ノーラン監督:どんな年齢の方、特に若い世代が楽しんでいただけるように今回試みたことは、若い俳優をキャスティングしたことです。30代の役者が若者を演じるということはやりたくなかった。当時のダンケルクには18、19歳の若者がいたんです。そのために、映画学校に行ったり、ワークショップとオーディションを重ねました。今回、映画初出演という人にも出てもらっているのは、非常に大事なポイントです。「当時、こういうことを突きつけられていたんだ」ということを若い人も共感していただければと思っています。
MC:ノーラン監督について「頭の中をのぞいてみたい人ナンバーワン」とおっしゃっていましたが?
岩田:映画の完成図を想定してどう作り上げるのかを、結果がわかった上で逆算して作っているイメージを持っています。その映像を撮るにはインスピレーションや表現したいものが明確にあるだけでなく、スタッフの協力がないと形にすることは難しいと思います。その上、ハリウッドで商業映画なのに毎回自分の作りたいことを作る監督は本当にすごい! だから「この人の頭の中ってどうなってるの?」と羨ましく思います。
ノーラン監督:優しいお言葉をありがとうございます(笑)。監督の面白いことは、何かひとつに秀でていないとダメということではない、ということです。色々なことに興味を持ってやり遂げるために、才能のある人たちを集めればいいんです。彼らを束ねるのが監督の仕事。彼らの意見に一貫性を持たせる。色々な視点の焦点を定めて、ビジョンを明確にする作業です。建築家や楽団の指揮者に似ているかもしれません。
MC:せっかくですので、岩田さんからご質問をお願いします。
岩田:現場を大切にされていて、いつもカメラの横でディレクションされているとのことですが、作品作りで最も大切にしていることはなんでしょうか?
ノーラン監督:映画作りには色々な段階があります。撮影当初はみんな元気で意気揚々として楽しいですが、撮影は長く続くので段々疲弊してくる。それが終われば編集です。どう繋いで、どうベストなものを作るか四苦八苦するけど楽しい作業です。監督が関わる中で一番好きな作業は、音のミキシングです。数ヶ月かがりで取り組みますが、編集は終わっているので絵は完成している。何千という効果音や音楽を使ってより良いものにするミキシング作業は非常に充実感があります。
岩田:連日、各国を飛び回られて映画のことばかり聞かれているかと思いますので…日本で好きな場所、食べ物はなんでしょうか?
ノーラン監督:前回は家族と来て、新幹線で京都に行き、旅館に泊まりました。子ども達にとっていい思い出になっています。旅館の障子に穴を開けてしまいましたが…(笑)。京都旅行はもう一度行きたいです。
MC:ここで監督から岩田さんにサプライズプレゼントが
岩田:完全にサプライズですね! めちゃくちゃ嬉しい! 童心に帰りました!
ノーラン監督から『ダンケルク』のサイン入り完全脚本オリジナル英語本が手渡され、満面の笑顔の岩田。監督と固く握手を交わした
ノーラン監督:今日はご一緒させていただきありがとうございました。
岩田:ありがとうございます!!
岩田が監督にハグをし、監督が受け止めると会場から拍手