刊行から50年、遠藤周作没後20年の2016年。世界の映画人たちに最も尊敬され、アカデミー賞にも輝く巨匠マーティン・スコセッシ監督が、戦後日本文学の金字塔にして、世界20カ国以上で翻訳され、今も読み継がれている遠藤周作「沈黙」(新潮文庫刊)をついに映画化した。
1988年、スコセッシが原作と出会ってから28年、いくつもの困難を乗り越えて実現した一大プロジェクトだ。キャストは主演のアンドリュー・ガーフィールドを筆頭に、アダム・ドライバー、リーアム・ニーソン、日本からは窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシら、各世代の実力派が名を連ねる。さらに、全員でアカデミー賞受賞6回、アカデミー賞ノミネート23回のスコセッシゆかりの最高のスタッフと、時代考証などで日本人のスタッフが加わり、舞台となる江戸初期の長崎を再現した。
人間の強さ、弱さとは?信じることとは?そして、生きることの意味とは?
この混迷を極める現代において、人類の永遠のテーマをあまりに深く、あまりに尊く描いた、マーティン・スコセッシの最高傑作にして本年度アカデミー賞最有力作品がいよいよ上陸する。
11月 29日(現地時間)に発表された、世界の映画賞レースの前哨戦となるナショナル・ボード・オブ・レビューでは「トップ10作品」に選ばれ、見事「脚色賞」に輝いた。11月 30日(現地時間)には、バチカン宮殿にて司祭のための試写会が行われ、マーティン・スコセッシがローマ教皇フランシスコ(ローマ法王)と謁見、長崎の隠れキリシタンが250年にもわたる弾圧の中守りぬいた17世紀の聖母画「雪のサンタマリア」(日本二十六聖人館蔵)の写真を贈ると、イエズス会派の教皇は「沈黙」を読んだことがあると話し、全世界の注目を集めた。そして、12月4日(現地時間)に発表されたLA批評家協会賞では、激しいキリシタン弾圧を推し進める井上筑後守(いのうえちくごのかみ)を演じた日本人俳優、イッセー尾形が、助演男優賞の次点に選ばれた。この快挙を記念して、イッセー尾形が演じる井上奉行の姿をとらえた場面写真が解禁となった。
イッセー尾形が演じる井上筑後守とは、残忍な弾圧政策を推し進める危険人物と噂されながら、物腰柔らかなそぶりで宣教師のロドリゴに棄教を迫り、追い詰める狡猾な人物だ。今回解禁された場面写真は、山中で囚われた隠れキリシタンとロドリゴの前に現れ、「転べ」と迫る井上の姿をとらえたシーンだ。猛暑と土埃に閉口しながら、手にした扇子で顔にまとわりつくハエを払っている。
12月4日(現地時間)にLAで行われた初の一般試写会で700人近い観客の前に登壇したマーティン・スコセッシ監督は、イッセー尾形が演じる井上のキャラクターは、既にオーディションの時に出来上がっていたと語った。「扇子捌き、蠅をピシャリと打つ動作、口の中の埃、彼が意気消沈する瞬間―私たちは皆、お互いに顔を見合わせて『OK』と言ったんだ」
ロドリゴを演じたアンドリュー・ガーフィールドも共演者であるイッセー尾形の演技を高く賞賛する。「ヘビ使いと一緒の部屋にいたようなものだ。あなたはヘビであり、同時に食べられてしまう人でもあった」
その演技がいち早く評価されたイッセー尾形の熱演を心待ちにしようではないか!
若き宣教師ロドリゴが見た想像を絶する日本とは。そして、彼を待ち受ける過酷な運命とは。ハリウッドと日本の技術、才能、パッションが融合し、人間にとって本当に大切なものとは何かを、壮大な映像で問いかける歴史大作に注目だ。映画『沈黙-サイレンス-』は、2017年1月21日(土)全国ロードショー。