松雪泰子主演、川端康成不朽の名作を現代版として蘇らせた映画『古都』が11月26日(土)京都先行公開、12月3日(土)より全国公開となる。
映画は1962年に新潮社より刊行された川端康成『古都』の現代版として、原作では描かれなかった、大人になった主人公たちの物語として映像化。京都伝統の呉服屋で生きる姉と北山杉の里で働く双子の妹を主演の松雪泰子が一人二役で演じ、それぞれの娘役で橋本愛と成海璃子が共演。その他、伊原剛志、奥田瑛二ら豪華キャストが脇を固める。
本作は原作の世界観に負けないため、オール京都ロケで撮影を敢行したが、アートを駆使して北山杉を守ろうとしている成海璃子演じる結衣の留学先として、京都の姉妹都市であり、文化芸術の街という共通点があることから、もう1つの古都としてフランス・パリでも撮影が行われた。
初めてパリにロケハンに行ったSaito監督は観光名所に惹かれたが、2回目に行った時に芸大生たちを取材した。彼らからこれからのカルチャーの中心は20区だと熱弁され、日本映画では撮影したことのない移民街を舞台に選ぶ。
パリでのロケ撮影は2015年12月にスタートする予定だったが、11月に凄惨なテロが勃発し、撮影は中止を余儀なくされた。フィレンツェやプラハなど他の古都への変更も検討されるが、Saito監督はどうしてもパリで撮りたいと粘ったという。「人々のプライドが高く、セーヌ川と鴨川が流れ、伝統が息づいていて。パリと京都は双子だと僕の中で成立していたんです」と想いを明かす。3月には情勢も落ち着き、撮影は無事にスタート。日本の撮影隊に驚いたフランスの国営テレビが、現場に取材に来たこともあったという。観光旅行ではまず見ることのできない、リアルなパリの一面が切り取られている。
海外ロケが初めてだったという成海は、京都ロケで出来上がったチームに遅れて参加することへの“アウェイ感”を、海外で孤独な葛藤を抱える結衣の役作りにうまく生かしたと話す。終盤には、現地スタッフとも飲みに行くほど仲良くなったそうで、成海の滑らかなフランス語にも要注目だ。
結衣のエピソードは、アメリカで映画修行をした経験のあるSaito監督の実体験をもとに描かれている。夢を抱いて海を渡ったけれど、現実は甘くなかったという過去を成海璃子に説明した。また、パリのシーンは『魔女の宅急便』をモチーフにしており、キキが自分を見失って飛べなくなるように、結衣は絵が描けなくなる。既に観ていた成海に、撮影前にもう一度観てもらい、イメージを膨らませてもらったという。弱さを見せまいと揺れる多感な心情を繊細に演じる成海の演技に注目してほしい。映画『古都』は11月26日(土)京都先行、12月3日(土)より全国公開。