園子温監督の『ひそひそ星』に通じるこだわりとは!?『部屋 THE ROOM』トークショー リポート

園子温監督の『ひそひそ星』に通じるこだわりとは!?『部屋 THE ROOM』トークショー リポート
提供:シネマクエスト

園子温監督最新作『ひそひそ星』の公開を記念して、7日から園監督自身のセレクト作品を含む7作品を日替わりで上映する特集上映<『ひそひそ星』公開記念!シネマカリテセレクション園子温監督作品上映>がスタート。その初日には『部屋 THE ROOM』が上映され、同作品のプロデューサーを務めた安岡卓治氏と園監督を最も知る映画人のひとりといっても過言ではないモルモット吉田氏(映画評論家)によるトークショーが行われた。
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「園監督の最近の作品に馴染みのある人からすると不思議な映画に見えるんじゃないかと思います」と吉田氏が切りだすと、1993年に製作された『部屋 THE ROOM』のプロデューサーを務めた安岡氏は、「園くんの映画は躁鬱の波が激しいとずっと思っていて、“躁”の時は皆さんご存じの通りとんでもないことをやらかすじゃないですか。でも、8ミリ時代から考えてみるとそういう抑揚が彼の中にはあって、『部屋』はどちらかというと“鬱”期にあたる。躁鬱を繰り返すんだろうなと思っていたら、その後ずっと飛ばしっぱなしだからちょっと心配してたんです。このままこの人は壊れてしまうんじゃないかと……。だけど、『ひそひそ星』が久しぶりに静ひつなものに仕上がっているみたいで、とても楽しみにしてるんです」と説明し、監督最新作への期待を寄せた。

関係者を通じて『部屋』の製作にあたりスタッフの斡旋を頼まれた安岡氏は、シナリオ代わりに見せられた28シーンからなる独特なスタイルで作られた“詩集”を読んだ時の衝撃を熱っぽく語る。読んだ上で30分ぐらいの作品になるのだろうとイメージして園監督と実際話をしてみると、「90分ぐらいです。僕は時間が撮りたいんです」と告げられたという。電車に乗って車窓を眺めたり本を読んだりしている何気ない光景を収めることにこだわりを持っていたという園監督のイメージは、安岡氏にもすぐ伝わり、「俺、プロデューサーやるわ!」と自ら名乗り出たという。続いて、撮影時のアクシデントももろともしないポジティブさや、天候を理由に撮影終了日を死守しようとしたらキレてしまったり、公開後でさえ編集に強いこだわりを見せたといった当時の園監督にまつわる驚きの裏話を次々に熱っぽく振り返った。

さらに、「作ることって遊びの精神がないと面白いものになっていかないじゃないですか。ルーティーンの工作物を作っているわけじゃないから、お互いにいかにインスピレーションを感じ合えるか、そこに驚きと喜びがあることが大事。最初に僕が30分尺かなと思っていた作品が90分でと言われた時の“えっ?”というね。でもその裏側には“それ面白い。しかも詩なのに、これで映画を作ったらどうなるんだろう?”という僕自身ときめきから始まって、それが周りに伝染していったことは間違えないんです。」と、ミニマムな世界から豊かなものを作り上げていく『ひそひそ星』に通じる作品の魅力について語った。

安岡氏は、園監督を捉えたドキュメンタリー『園子温という生きもの』にも出演。なかなか都合が合わず、久しぶりにお酒を飲む機会があった時にたまたまドキュメンタリーのカメラが入っており、お酒が入りリラックスして語り合うふたりの様子を確認することができるが、その時の感想として、「創造するってことは何かを破壊することでもあるから、その表裏の中を生き続けているすごい人なんだなと改めて実感しましたね」と振り返った。

吉田氏は、「レンタルでも観られる『部屋』と『ひそひそ星』、『園子温という生きもの』の3本を観るとすべてが一巡して楽しめるんじゃないかと思います」とまとめた。

最終更新日
2016-05-09 12:59:54
提供
シネマクエスト(引用元

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