提供:キネマ旬報
過酷な延命治療に苦しむことなく、家族に支えられながら自分らしい生活を送れるとして、病院での面会が禁止されたコロナ禍以降に注目が高まっている《在宅緩和ケア》。それを萬田緑平医師のもとで実践する5つの家族を追った「ハッピー☆エンド」が、4月18日(金)よりシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国で順次公開される(萬田医師の医院がある群馬では、4月19日(土)より前橋シネマハウス、5月よりシネマテークたかさきで連続公開)。
登場するのは、末期がんで余命宣告され、病院での治療をやめて自宅で過ごす人たち。在宅ケアで2000人以上を看取ってきた萬田医師の指導のもと、薬と家族の力を借りながら、時には酒を嗜み、食べたいものを食べ、ゴルフや旅行を楽しみ、ペットと過ごし、そして自身の葬式や墓のデザインを考えながら、最期まで自然体で生きていく。同時に、一緒に過ごす家族は気持ちを整理し、納得してお別れをしていく。まさしく見送られる側と見送る側の理想のかたちといえる。
また、2018年に亡くなった樹木希林さんの講演会での映像も使用。「死ぬというのは“日常”なんです」という向き合い方に、ハッとさせられる。
監督は「いただきます」「夢みる小学校」で教育現場にカメラを向けてきたオオタヴィン、ナレーションは佐藤浩市と室井滋が担当、エンディング曲にはウルフルズ『笑えればV』を起用。闘病記ではない、日常の輝きを見つめた注目ドキュメンタリーだ。
〈コメント〉
萬田緑平医師
僕の診療のポリシーは「患者本人が好きなように」、「本人が望むこと」を全力でサポートすることです。
患者さんの笑顔を引き出すことが、僕のケアの中心です。
退院して家に帰ったら〝身体にいいこと〟より〝心にいいこと〟を優先して考えましょう。
旅行も、お酒も、ゴルフもみんなOKです。
その治療で患者さんが幸福になっているか、がすべてです。
患者さんの望みをすべて叶えちゃいましょう!
オオタヴィン監督
萬田流の看取りでは、家族がお別れ会を開き「ありがとう」「いい人生だった」という言葉を家族が交わします。
僕には、それが〝人生の贈り物の交換〟にみえたのです。
患者さんは家族からの感謝の言葉という〝贈り物〟を抱いて安らかに「逝き」、遺族は〝最期の贈り物〟を胸に刻んで、悲しみを乗り越えて「生きて」いく。
この映画は、「病院医療」と比較して「在宅医療」を勧める映画ではありません。
「病院医療」以外にも「在宅緩和ケアという選択肢」があることを知っていただくための映画です。
こうした情報を知って初めて私たちは、治療法を冷静に判断できるようになるのではないでしょうか。
本作を作った社会的な意義も、そこにあると思っています。
「涙を誘う闘病映画」や「悲しい終活映画」の対極にある映画です。
歩くこと。笑うこと。生きていること。
何気ない日常の輝きを、患者の目線で体験していただければうれしいです。
佐藤浩市(ナレーション)
緩和ケアを受けることで、がん患者さんたちが、お酒を飲んだり、ゴルフをしながら自分の人生を満喫できる。素晴らしいなと思いましたね。
映画のなかで「がんがお別れができる病気である」ことが描かれていて、僕もがんに対する認識をあらためていかなければいけないんじゃないかな、と感じました。
映画をご覧いただいたみなさんが「在宅緩和ケア」をご自分の人生の選択肢に加えていただけるか?
僕はこれがこの映画の大きなテーマだと思います。がんで悩む現代人には勇気が出る映画です。ある年齢になったら観ておいた方が良いと思いますよ。
室井滋(ナレーション)
緩和ケアの実態、私もこの映画で初めて知りました。
がんになっても痛くない、なんてすごいですよね。患者さんたちの元気な笑顔にびっくりしました。
日本人の2人に1人は、がんという時代になりました。
パンデミックも、また、いつ起こるか分かりません。
本作は人々の終末期のドキュメンタリーですが悲しい映画ではありません。見ると不思議な希望が湧いてきます。そして、この映画は他人ごとではなく、みんなで一緒に見て、どう思う?と話し合うにはいいきっかけになる作品だと思います。
内田也哉子(エッセイスト、俳優 ※樹木希林の娘)
家の居間で安心して眠るように、母は逝きました。
彼女がずっと願っていたように、
日常から切り離されることなく、
子や孫に見守られながら・・・。
それは、温かく静謐な時間でした。
人はなかなか自らの死にざまを選ぶことはできませんが、
生きてきたように終える支度ならできるかもしれない。
この映画は、どのように私たちが「生きたいか」を問いかけてくれます。
「ハッピー☆エンド」
出演:萬田緑平(在宅緩和ケア医)、樹木希林
ナレーション:佐藤浩市、室井滋
エンディングテーマ:ウルフルズ「笑えればV」
監督:オオタヴィン
製作:まほろばスタジオ 配給:新日本映画社
2025/日本/カラー/16:9/ステレオ
©まほろばスタジオ
公式サイト:https://www.happyend.movie/