新人・田中稔彦監督が美しい自然の中に人間の脆さを描く「莉の対」、ロッテルダム国際映画祭ノミネート

新人・田中稔彦監督が美しい自然の中に人間の脆さを描く「莉の対」、ロッテルダム国際映画祭ノミネート1
新人・田中稔彦監督が美しい自然の中に人間の脆さを描く「莉の対」、ロッテルダム国際映画祭ノミネート2

提供:キネマ旬報

舞台を中心に活動する俳優の田中稔彦が初監督・脚本を担い、東京と北海道を舞台に出会うはずのなかった男女の物語を紡いだ3時間超えの大作「莉の対」(れいのつい)が、第53回ロッテルダム国際映画祭タイガーコンペティション部門にノミネートされた。日本では2024年春より上映予定。

自身の存在を希薄に感じながら生きる光莉(ひかり)は、一枚の写真に惹かれ、撮影者にポートレイト写真を撮ってほしいと依頼する。すると「人物の写真は撮ったことがありません。あと、僕は耳が聞こえません。なので喋ることもできません。うまくコミュニケーションが取れないと思います。それでもよければ……」と、風景写真家の真斗(まさと)より返信される。
光莉と真斗をそれぞれ取り巻く人間関係は影響し合い、崩れていく。《莉》は単独ではほとんど意味を持たない。他と結びついて初めて意味を持つ--。

障書のある子を持つ夫婦、行き場のない不倫を続ける男女、子を愛せなかった母、弟の苦悩に寄り添えなかった兄、そして耳が聞こえない風景写真家といった事情を抱える者たちが登場。人間の脆さと弱さが、自然の美しさと対比されるヒューマンドラマだ。

田中稔彦監督コメント
映画『莉の対』は2024年にオランダで開催される「ロッテルダム国際映画祭」のメインコンぺであるタイガーコンペティション部門にノミネートされ、先日映画祭公式からの発表もありました。
そのような名誉あるノミネートを頂きましたが、僕たちの映画チームは正直に言って最弱中の最弱!で、自主制作も甚だしいスタートでした。全キャストスタッフ合わせて2人しかいない状態でクランクインをするような、そんな作品づくりでした。
僕たちの最大の武器は「何もない」でしかありません。
これまで頭を下げまくってきて、手助けして下さる方が沢山いたおかげでここまで漕ぎ着けることができました。
もしこれから映画を作っていきたいと考える若者がいて、僕たちのような映画制作者がいた事に少しでも希望を見出して欲しいという思いも今はあります。ですが、この作品を世に広めなければ伝わらないため、メディアのみなさまのお力をお借りしたいと思いました。
〈制作の意図〉
この映画作りは、自分の人生を変える為の戦いでもありました。
僕は普段舞台俳優をやっていますが、コロナ禍でお芝居の劇場が閉鎖されるなど、変化を余儀なくされていた時代の最中で、「待ってたらダメだ、周りと同じことをやっていても埒があかん!」と思い、とにかく長編映画を作って海外の映画祭に出して賞を取ろう!と決意しました。
そして関わってくれたキャストやスタッフが次の人生を切り拓くための一助になればと思い、メインキャストは全員オーディションで決定し、力のある人たちが平等にチャンスを得られるようにし、さらにサブキャストに至るまでスポットライトが当たる内容にしました。
スタッフもプロではなく、新しいことにチャレンジしてみたい!畑違いだけど映画をやってみたい!と名乗り出てくれる人たちで構成しました。
〈作品に込めた思い〉
初段階より商業的な映画にするつもりは全くなく、それでいてアート作品に偏らず奇を衒った内容ではなく、どこにでも居るような問題を抱えている人たちに焦点をあてました。
「人間を描きたかった 人間の葛藤を描きたかった 脆く汚く生きる人間たちの弱さ そしてそれと対比するように 自然の美しさ厳しさ暖かさを描きたかった」
そんな僕の想いが詰まった作品に仕上がりました。したがって3時間を超える長編になりましたが、この映画が世界的に評価を受けることで、携わってくれた人たちが次に繋げられるような作品に成長させてみせます。
タイガーコンペティション部門は邦画でノミネートされることは非常にまれで、今年は全世界から14作品のノミネート。
この中でグランプリを目指して戦います。

「莉の対」
監督:田中稔彦
出演:鈴木タカラ、大山真絵子、森山祥伍、池田彰夫、勝又啓太、田野真悠、菅野はな、内田竜次、築山万有美、田中稔彦
上映時間:190分 英語版タイトル「Rei」
公式サイト:http://reinotsui.com

最終更新日
2023-12-22 13:30:45
提供
キネマ旬報(引用元

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