観る者の心をえぐる鬼才ミシェル・フランコ監督が辿り着いた新境地とは?『あの歌を憶えている』

観る者の心をえぐる鬼才ミシェル・フランコ監督が辿り着いた新境地とは?『あの歌を憶えている』

アカデミー賞R女優 ジェシカ・チャステイン主演最新作『あの歌を憶えている』が、2月 21 日(金)より、新宿ピカデリー、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開。

「優しさと希望があり、素晴らしい」「演技に息を呑む」世界が絶賛!
忘れたい記憶を抱え続けている女と、忘れたくない記憶を失っていってしまう男。NY・ブルックリンを舞台に、記憶に翻弄される不器用なふたりが出会い、新たな人生と希望を見つけていく、観る者の心を温かく抱擁する愛のヒューマンドラマ。監督は人間の内面を真正面から、時に観る者を不安に陥れるほど暴力的な描写で描いてきたメキシコの俊英ミシェル・フランコ。主演は、『女神の見えざる手』(16)や『355』(22)などで知られ、『タミー・フェイの瞳』(21)でアカデミー賞主演女優賞受賞を果たし、名実ともにハリウッドのトップスターの一人となったジェシカ・チャステイン。わずかに残る遠い記憶を慈しむ若年性認知症を抱えるソールを演じたピーター・サースガードは、その難しい役どころを情感豊かに体現し、第80回ヴェネチア国際映画祭にて最優秀男優賞を獲得。その他、シルヴィアの妹オリヴィア役にメリット・ウェヴァー。シルヴィアの娘アナにブルック・ティンバー。シルヴィアの母親サマンサ役にジェシカ・ハーパーなどが脇を固める。また、全世界で1000万枚以上を売り上げた大ヒット曲であるプロコル・ハルムの「青い影」のエモーショナルな旋律が、登場人物たちの心情を際立たせる。

母親を失い光を失くした父親と娘の間にある暴力性を炙り出した『父の秘密』や、終末医療の看護師の喪失や葛藤を描き死に対する認識や距離を描いた『或る終焉』、緊張感に満ちた母娘の関係を通して、自己犠牲も厭わない献身と愛に満ちた母性という神話をこなごなに打ち砕いた『母という名の女』、そして広がり続ける経済格差が引き起こす社会秩序の崩壊を目を背けたくなるほどの“最悪”のリアリティをもって描いた『ニューオーダー』など、市井の人々の複雑な心の機微を描き、カンヌ脚本賞等、高い評価を受けるミシェル・フランコ監督。
母国メキシコを舞台に、過酷な状況や不条理に直面した人間の抱えるトラウマや孤独など複雑な闇をテーマに、動機や目的のわからぬ行動で観る者を不安の極地に陥れながらも、厳しくも冷静な視点で撮りつづけているミシェル・フランコ監督の新境地とも言える本作は、NY・ブルックリンを舞台に、記憶に翻弄されるふたりが出会い、支え合いながら新たな人生を模索するヒューマンドラマだ。それだけ聞くと一見、本当にあのミシェル・フランコ監督作品なのかと思ってしまう人もいるかもしれない。しかし、そこは安心してほしい。記憶障害を抱える男と、過去を秘めた女性、そのふたりの心の傷を単に掘り下げ癒すのではなく、反対にトラウマを次から次へと追加していく。性的暴行、ストーカー行為、アル中、娘を一切信じない母親・・・。勿論、監督の撮影手腕も健在で、無駄なセリフでの説明やフラッシュバックなどでは説明せず、表情だけで観客に伝えていくのだ。そして、不器用な二人が戸惑いながらも寄り添い、新たな人生と希望を見つけていくラストシーンは観る者に大きな余韻を残すー。二人の葛藤と周囲の人々が織り成す人間ドラマでもあり人間の残酷さと寛大さ、温かさと辛さ、相反する面を含み、解釈を委ねる映画に仕上がっている。

人間の時には過酷な真実に迫り続けてきた才能が、最新作となる本作では真実を愛で包み込む奥深い視線で、今この時代に希望に輝くエンディングを届ける『あの歌を憶えている』は2月21日(金)公開。

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配給:セテラ・インターナショナル © DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

最終更新日
2025-02-07 14:00:00
提供
映画の時間編集部

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