フランス映画として初めてアカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされ、高畑勲監督も絶賛した21世紀フランス・アニメーション伝説の傑作『ベルヴィル・ランデブー』が7月9日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開。
<期待を裏切るマジカルな面白さ>
おばあちゃんと幸せに暮らすシャンピオン。内気な少年が情熱を傾ける自転車レースのためにふたリは特訓を重ね、遂にツール・ド・フランスに出場する。しかし、そこで事件は起きる。マフィアに誘拐された孫を追って、愛犬ブルーノとともにシャンピオン奪還のための大冒険が始まる。協力してくれるのは伝説の三つ子ミュージシャンの老婆たち。腕力では敵わないが、人生経験と知恵そしてユーモアと愛で数々の難局を乗りきっていく。
バンド・デシネ作家出身の監督が構築する、遊び心にあふれた仕掛けとユーモア満載の独特の映像からいつの間にか目が離せなくなり、デフォルメされたキャラクターが織りなす不思議な物語は、観客の予想を心地よく裏切って展開し人々をたちまち魅了する。さらに、アカデミー賞歌曲賞にノミネートされたジャズの主題歌など小気味よい音楽が、観る者を映画の中により深く引き込んでいく。ジャンゴ・ラインハルトやジャック・タチ、チャールズ・チャップリンなど監督の少年時代のヒーローたちにオマージュが捧げられた、きわめて個性的な長編アニメの傑作。
シルヴァン・ショメ監督×土居伸彰(ニューディアー代表/アニメーション研究・評論)オフィシャル対談インタビューを公開!
この度、シルヴァン・ショメ監督のオフィシャル対談インタビューが行われた。インタビュアーとして、監督の長年のファンだと言うアニメーション研究・評論の土居伸彰さんを迎え、オンラインにて実施した。大人向けの長編アニメーションが増えてきた最近の動向について尋ねると、「大人向けの作品が多く作られるという現在の傾向は歓迎しています。ただ、私は大人だけというのでなく、大人と子供、あらゆる世代の人が楽しめるものを作りたいと思います」と自身の作品作りへの思いを語った。
『ベルヴィル・ランデブー』のカオスやグロテスクさのある表現については「私はバンド・デシネからキャリアをスタートしました。誇張やカリカチュアはとても重要です。私は自由に描くことができるから漫画が好きだし、自由のために描いているのです。政治的に正しいという点では、今やカリカチュアするだけで怒り出す人がたくさんいます。それはみんながユーモア・センスを失ってしまったからです。問題を解決するのに必要なのはユーモア・センスであって、人を黙らせようとすることではありません」と、現在の不寛容な風潮に警笛を鳴らした。
現在準備中という監督が設立する映画学校についても質問が及び、「バイユーというノルマンディの町に学校を設立しました。私が映画を制作した際、多くの若いアーティストと仕事をし、それを通じて若者の育成にかかわりました。教えるのが好きですし、自分のアニメーションへの情熱と技術を次の世代に伝えたいのです」と、新たな目標を明かした。昨年9月に開校を予定していた学校は、パンデミックの影響で当初の予定を変更し、ストーリーボードの1年コースで監督育成を目指すという。
最後に現在準備中の新作について、「フランスの国民的作家であり映画作家だったマルセル・パニョルの伝記映画『The Magnificent Life of Marcel Pagnol』を準備中です。パニョルは映画スタジオや配給会社を作り、トーキー映画の普及に貢献しました。老人となり、創作の意欲をなくしたパニョルが、何にでも興味をもっていた子供時代の彼自身と対話をする、というかたちで語られます。忘れてしまっていた自分の中の子供とコミュニケーションすることで、もう一度共通するものを取り戻そうとするのです。今回は作家、劇作家、映画監督なので、映画にはセリフがあるようにします。今までの作品とは違ったアプローチになります」と、新作ではセリフのある映画になることを教えてくれた。2年半後の完成を目指すという。
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