『愚行録』『蜜蜂と遠雷』で国内外より注目される石川慶監督の待望の新作映画であり、『累 -かさね-』と『散り椿』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、最新作『ファーストラヴ』では、その憑依したような熱演に堤幸彦監督から“涙の魔術師”と絶賛された主演・芳根京子が一人の女性の17歳から100歳以上を生き抜くという、キャリア史上最難関の役どころを繊細かつ大胆に演じる、人類にとって全てが初めてとなる不老不死の世界を描いた、驚嘆と不思議(=センスオブワンダー)に彩られた壮大なるエンターテインメント作品『Arc アーク』が本日6月25日(金)より全国公開中。
芳根京子が10代から100歳以上までを演じ分け、いままで誰も見たことのない新しい日本映画として公開前から話題沸騰中だった本作、主演の芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、小林薫、鈴木咲(子役)、石川慶監督を迎え、公開初日舞台挨拶を実施。
東京都の緊急事態宣言が解除され、劇場は満席という盛況を見せる中、拍手に包まれキャストと監督が登場。本作で、観客を前にしたイベントを実施するのは本日が初めてとなり、ゲストたちも感極まった表情を浮かべた。
7年ぶりの主演作で、人類初の”永遠の命”を手に入れた女性・リナという難役を演じきった主演の芳根京子は、観客を見まわして小さく呼吸を整えると「今まで私たちの手の中にあった子どものような『Arc アーク』という作品が、今日外にパッと飛び立つ瞬間は淋しくもあり、力強く飛んでいってね、という思いです」と公開を迎えた喜びを語った。リナの人生の師となる黒田エマ役・寺島しのぶは「このようにお客様がたくさんいらっしゃる中での舞台挨拶は、とても感動的なものがあるなと思いました」、エマの弟で、ストップエイジングの研究をする天才科学者の黒田天音(くろだ・あまね)役・岡田将生は「100%の客席をみると圧倒されてしまって、とても感慨深いものがあります」、リナの職場の同僚・可南子(かなこ)とその娘・奈々の一人二役を演じた清水くるみは「こんなにきちんとお一人お一人の顔がみえて、皆さんの(作品を)観終えた顔を観ると今日を迎えられてよかったと思います」、リナに大きな影響を及ぼすキーパーソンの利仁(りひと)役・小林薫はユーモアたっぷりに「コロナ禍でどういう初日を迎えられるのか想像できなかったのですが、こちらからみると皆さんマスクされていて、案山子のようにもみえるので本当に人が入っているのかな(笑)とも思いながら(客席を)みていました」、本作の監督・脚本・編集を務めた石川慶は「コロナの直前に撮り終えて、色々状況が変わる中で色々な想いを抱えながら仕上げていました。一時期は、ひょっとしたら映画館で上映できないのでは、と思っていた作品が、こうして満席のお客様の前で上映できて感無量です」と、それぞれの思いを語った。
続いてフリップトークに展開。本作は、香川県を中心に美しい風景の中で撮影が行われ、衣裳や装飾品、小道具など細部に至るまで徹底的にこだわりぬき”誰もみたことのない新しい日本映画”とも言われており、演じたキャストたちに「注目シーン」とその理由をあげてもらった。
芳根は【たくさんの愛】。「この作品では、愛情・友情が描かれていて、リナと天音、リナとエマ、他にもたくさんある。そして、何よりとても素敵だなと思えたのは、キャストもスタッフも石川監督へのたくさんの愛があり、石川監督は作品への愛がある。作品の中でも現場でも、たくさんの愛を感じる作品になりましたので、心が温まっていただけら嬉しいなと思う」。
寺島は【プラスティネーション】(※劇中に出てくるワード。最愛の存在を亡くした人々のために、遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術を指す)「台本をいただいたとき、これを何故私がやるんだろうと、全く意味が解らなかった(笑)監督とお会いして、そこで頭の中を垣間見れたことがあったが、とりあえず現場に行って考えようと思いながら臨む、初めてに近い作品だった。”プラスティネーション”については、(役柄で)自分が一番のパイオニアということもあり、これを芳根さんに伝承していく、というものだったので、ここだけ成立すればいいかな、と思うくらいに大事に思っていたシーンだった」と最初に台本を読んだ時の印象を交えて回答。
岡田は【海辺】。「僕と芳根さんが新たな人生の一歩を踏み出した後に訪れる衝撃の事実を告げるシーンが割と海が見えるシーンで、他にもこの映画の肝となるシーンは海が近くにある。その先に広がっているこの世界の広さを感じられるな、と作品を観た時に思った」と繰り返し登場する印象的な海のシーンについて語った。
清水は【日本映画離れしたエンドロール】。「温度のない、日本映画離れしたこの作品の、最後に流れる歌詞のない曲と、白いバックのエンドロールに鳥肌がちました。あれを観て、最後に涙が流れました」と独特のエンドロールをピックアップ。石川監督いわく”希望を感じられるエンドにしたい”という思いがあって、その様なエンドロールになったとか。
小林は【言いたいのは山々なんですが上映後のお楽しみ!】。理由を聞かれると「(役柄として色々言えないことがあるため)これからご覧になる方々へのメッセージです」と説明。苦笑いしつつ「(夫婦役を演じた)風吹ジュンさんと、自然の豊かな島で撮影した。監督は割と安心感を与てくださった方で、そのおかげで僕は難なく楽しく役に入ることができた」とよい撮影時間だったことを振り返った。
石川監督は【衣裳・メイク】。「映画の中でも衣裳やメイクはなかなか注目がされにくいところだが、僕らの後ろに何十人も役を支えてくれた人たちがいる。特に衣裳やメイクは未来になるとどうなるんだろうか、姿は変わらないけれどメイクは変わるとか、細かいところをまた見ていただけたら嬉しいと思う」と、本作品の美しい映像を生み出したスタッフへ感謝の言葉を贈った。
そして、いよいよ主演の芳根に向けたサプライズタイムに突入!まずは、劇中で芳根演じるリナの娘・ハル役の鈴木咲が登場。芳根に花束をプレゼントし「リナ、公開おめでとうございます!」と芳根が演じた役の名前で元気いっぱいに伝えると、芳根は「自分にこんなに母性本能があるんだなって気づかされた。本当に咲ちゃんから引き出してもらった部分がたくさんあったので、本当に感謝しています」と、”愛娘”にむけて感激の表情を浮かべた。
続いて、石川監督からは手紙がプレゼントされた。MCから「手紙のプレゼントがあります」と明かされると「泣いちゃう、泣きそうです‥!」と笑顔を浮かべつつ慌てる芳根。「『この映画は、自分がずっと夢見てきたものを詰め込んだ、特別な映画です。その自分にとって特別な作品のど真ん中に、芳根京子という特別な俳優が力強く立っている、そのことが心から嬉しく、誇らしく思います』」と手紙が読みあげられるのを聞いていた芳根は、こらえきれず号泣。涙が止まらない芳根だったが、傍らで鈴木が「(撮影)楽しかった〜!」と急に喋り出し会場が笑いに包まれる小さなハプニングに助けられる一幕も。「今日は、一言目から泣くの我慢していました。満員の観客のみなさんに観ていただけて、初めから感極まっていたのに、いつも石川監督の言葉に泣かされてしまう。こんなに幸せなことはないと思う。お話をいただいたとき、本当にこの仕事が自分に向いているかわからなかった時期で、でもそれも石川監督が優しく包み込んでくれたので、今こうして立つことができている。私の人生にかけがえのない存在です」と、時折り声を詰まらせながらも、石川監督へのあふれんばかりの思いを伝えた。
最後に、登壇者を代表して芳根から「これまで駆け抜けてきたので伝えたい思いがたくさんあったと思うけれど、ここに立つと感謝の想いしかない。本当に今の世の中で映画が公開できること、たくさんのお客様に観ていただけることは決して当たり前ではなないので、心から感謝しています。『Arc アーク』がたくさんの方に届くよう、皆さんのお力を貸していただけたら嬉しいです」とメッセージが送られると、場内からは拍手が沸き起こり、公開初日舞台挨拶は終了した。
■石川慶監督から芳根京子への手紙(全文)
芳根さんへ
最初オファーしたとき、「ちょっとむずかしいかも
しれないです」そう言われて、それでも諦め
きれずに時間をもらって直接会って話した日の
ことを思い出します、あのとき、芳根さんは大きな岐路に立っている様子で、これからのことに悩まれていて、役のことだけじゃなくいろんな話をしましたよね。そういう話をしてくれたことがとても嬉しく、まるでずっと知っている友人と話しているような気持ちになりました。
たぶん芳根さんは「今はこんなにたいへんな時期なので、こんなにたいへんな役むずかしいです」って言いたかったんだと思うんだけどそんな悩める芳根さんを見て、僕は
「ああ、リナがいる」と思ったんです。
それからの怒涛の日々は、ここにいらっしゃるキャストの皆さんもご存知かと思いますが、そりゃまあ、たいへんでしたね。まさに体当たり、満身創痍で役を生きている芳根さんに負けないように、こちらも必死でした。この映画は、自分がずっと夢見てきたものを詰め込んだ、特別な映画です。今、完成した映画を見て、その自分にとって特別な作品のど真ん中に、芳根京子という特別な俳優が力強く立っている、そのことが心から嬉しく、誇らしく思います。
ありがとう。
まだ自分の映画人生の軌跡、アークははじまったばかりですが、願わくば、人生の節々、転換点でまた一緒に映画を作っていきたいですね。
これからも末永くよろしくお願いします。
いつものごとく、断られてもしつこくオファーします。
2021.6.25
石川 慶
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『Arc アーク』全国公開中
© 2021映画『Arc』製作委員会 配給:ワーナー・ブラザース映画