P.N.「秋吉」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2022-12-19
池袋HUMAXシネマズにて鑑賞。
地味な団地から始まる2家族の狭い話で、冒頭から不穏な空気だがとにかくずっと音楽が美しい、そのアンバランスさが奇妙な心地へと誘われる。
気が重くなるような話だが、映像が美しく音楽にもどこか軽やかな美しさがあり、暗く沈んだ感じにはならない。この独特の味わいは他の作品であまり感じたことがなく面白い。
西村まさ彦の演技が圧巻、普通の人間が板挟みになり愛情と狂気の渦に飲まれていく様を演じる。どちらが良くてどちらが悪いか、良い悪いの二元論で語れる単純な話ではないのだろう。自分の身にある日突然起きたことと思えば答えは見つからない。西村のようにそれでも生き続けるしかないかもしれない。思い込むことへの警鐘を感じ取れもしつつ、その思いの檻の中で生きていかねばならない覚悟と哀愁に胸を打たれる。
最後の曲がとても良く、妙な余韻に浸りながら帰ることができた。音楽は断絶を埋め人を繋ぐだろう。