P.N.「pinewood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2022-08-14
更にアルベルト・イグレシアスの音楽がアルモドバル監督作品の醍醐味
ぺいんあんどぐろーりー
総合評価4.5点、「ペイン・アンド・グローリー」を見た方の感想・レビュー情報です。投稿はこちらから受け付けております。
更にアルベルト・イグレシアスの音楽がアルモドバル監督作品の醍醐味
冒頭とエンドが、絵画の様に美しかった! 生きることは、痛み・傷みを伴うこと。辛く悲しい記憶も、楽しく幸せな想い出も、全て過去であり、人は、それを反芻しながら生きていき、後悔や愛の亡霊に苦しめられ、歳を重ねる程、時々涙するのだろう。孤独や病気と向き合わねばならぬ時には、殊更に。回想シーンの美しく逞しい母親像は、まさしく聖母の様、ペネロペにぴったり。望郷だったか、彼女の役の起用が、実に上手い監督だと思う。初恋の感性や痛みに対しての違法薬物使用は、日本人の自分には理解し難かったが、全体を通して、人生晩年の良い味を知った監督の素敵な映画である
色彩美とともに監督自身の自画像見たいな作風で幼年時代の眩しいような母親との関係も芳醇な香りを放つ
メインのストーリーは、オーソドックス。
最近の映画に多いが、スマホが頻繁に挿入されて、一気に質を低下させつまらないモノにしている。
サブストーリーは、バレンシアの降注ぐ日差しが美しくその下で展開するシーンは、美しく、正しく映画を鑑賞している感覚だ。
作品を見事に暖かく豊かな気持ちにさせる。
母と子は、
聖母マリアと幼子キリスト
の構図であり
そこから奇跡は起きる。
貧しき平凡な両親から、生まれたとは思えない美声の才能豊かな息子。
バレンシアの日差し下で、性の目覚めを覚えるが、それさえも布石で、主人公が、現実だと思っていたことが、夢で、夢だったと思っていたことが真実だと目覚める。
貧しき者の味方、母の信仰心は、聖アントニオに導かれて、息子を育て上げた。
息子は、幻想の夢から覚め、真の夢の世界に目覚める。
見えるモノが幻想で、見えないモノこそが真実であることに。
この作品は、メインストーリーで捉えるとつまらないが、サブストーリーの愛に溢れるスペインの自然と母と子の設定が、豊かさを与える。