P.N.「畑で」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2019-07-16
映画は時間の芸術である、とは黒澤明の名言であるが、人生もまた時間の芸術であることを感得させられた。私の後輩にシングルマザーの映像作家がいる。二人の子供をかかえ文字通り悪戦苦闘の日々そのものが映像作品のように思えてしまうという。登場する99歳の母親も劇中劇のようなドラマを演じて100年を生きようとしている。この映画が観るものになんともいえない幸福感をあたえているのは人生の最終章にクライマックスを用意したことである。映画は創られたものではあるが人生も映画によってこのように創られるということを証明している。作為を極力排除することによって作為の趣旨が浮き彫りになるというドキュメンタリーの逆説が提示されている。