嘆きのピエタ 感想・レビュー 2件
なげきのぴえた
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P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-07-03
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
要するに、母と息子の激しい愛憎劇、それも魂と魂がぶつかり合う復讐劇をはらんだ物語で、そこには男の借金取り立ての現場となる、ソウルの町工場が連なる一画が深く関わってくる。
男の取り立ては残忍そのもので、債務者に重傷を負わせ、その保険金で利子が10倍に膨れ上がった借金を返済させるというあくどさ。
そんな嫌われ者のもとに、突然現れた”母”とはいったい何者なのか?
おそろしく良く出来た脚本だ。
これまでにも脚本には定評のあったキム・ギドクだが、この映画ではさらに腕を磨き、最後まで手の内を明かさない。
つまり終幕まで二転三転して、ラストシーンが見えないのだ。
そこで描かれるのは、愛憎劇の果ての母性、慈愛と悲哀に引き裂かれた母性の奥深さだ。
キム・ギドク監督は10代の頃、この映画の舞台となったソウルの清渓川地区で、工場労働者として働いていたそうだ。
そして青年時代は、夜間の神学校に通って牧師を目指したという。
”工場”と”神”が、この傑作に結び付いたことは間違いない。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-07-03
鬼才キム・ギドク監督のサスペンス映画「嘆きのピエタ」は、最後まで手の内を明かさない脚本が、愛憎劇の果てをも描いた作品だ。
キム・ギドク監督の映画は、いつ観ても肩が凝る。最後まで気の抜けない緊張感の連続に、全身がこわばってくるのだ。
特にこの映画はひどい。並みのサスペンス劇では到底及ばない、肺腑を抉るような息詰まる人間ドラマになっているからだ。
題名にある「ピエタ」とは、十字架から降ろされたキリストを、胸に抱く聖母マリアを指している。
つまり母と息子の物語なのだが、ここでは主役は母であり息子でもある。
生まれてすぐに捨てられた、30年間天涯孤独に生きてきた借金取りの男(イ・ジョンジン)のもとへ、ある時、母と称する中年女性(チョ・ミンス)が現われる。
執念深い彼女は、とうとう男の家に上がり込み、食事の世話までするようになる。
果たして彼女は、本当に母なのか?
ここから物語は次第に核心へと至るのだが、ミステリアスなサスペンス劇という関係上、細部を語るのは御法度だろう。