バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版 感想・レビュー 1件

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総合評価5点、「バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版」を見た方の感想・レビュー情報です。投稿はこちらから受け付けております。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-08

※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]

この映画を知らない人でも、多分、主題歌である「Calling You」は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
私もこの曲を聴いて、ああ、この映画の主題歌だったのかとびっくりしました。

この映画は「バグダッド」なんていうのがタイトルに入っているので、中近東が舞台の暗そうな映画かなと思っていたのですが、とんでもない、舞台はアメリカ。
砂漠のハイウェイで、とある夫婦が喧嘩をするシーンから、この映画は始まります。

太った奥さんの方が、怒って車から降りてしまい、歩き出します。
夫は奥さんの身を案じて、コーヒーの入ったポットを道に置いていきます。
それを拾って帰るのが、「バグダッド・カフェ」という店の主人。
砂漠の1本道沿いにある、このお店がこの映画の舞台となります。

ここは、ガソリンスタンドとモーテルとカフェを細々と経営している埃だらけの汚い店で、女主人のブレンダという黒人女性は、夫がポットを拾ってきたのを知り、あった場所に戻してこいと、ガミガミ怒りだします。
ブレンダは、いつもあまりにうるさいので、夫はとうとう家出をしてしまいます。

夫と喧嘩して車から降りたのは、ジャスミンというドイツ人の女性。 彼女は太っていて、とても無口。 反対に、ブレンダは怒りっぽくて、いつでも大声で不平不満をわめきちらしているんですね。 夫に出て行かれてからは、益々、それがひどくなり、誰にでも当たり散らすのですが、夫がいないので、仕方なく町に買い出しに行っている留守に、ジャスミンが店を綺麗に掃除するんですね。 このあたりから、様子がどんどん変わっていくんですね。 まず、目を見張るのが、「色」ですね。砂漠を表現するために、黄色、赤、青などのフィルターをかけたような色の画面が出てきます。 短いショットの多用もあり、観ている者の目にも焼き付くんですね。 そして、セリフの少なさも、この映画の特徴の一つで、特にジャスミンは、ほんとにしゃべらないんですね。 ドイツ人だからという、わけがあるからでしょうけれど、話せばけっこう上手に英語をしゃべるのに、ブレンダのように饒舌ではありません。 だから最後まで、ジャスミンはミステリアスな存在なんですね。 セリフではなく、映像で語らせることに成功している映画だと思いますね。

とにかく、「誰かに必要だと思われること」は、どんなに素晴らしいことかを教えてくれる映画なんですね。 最初は暗い表情の登場人物たちが、ジャスミンの登場、そして彼女の色々な行動が進むにつれて、生き生きとしてくるんですね。 特に、ブレンダの変化は驚くばかり。ラスト近くになると、そこはまるでラスベガスのような陽気さになっているんですね。 こんな素敵な映画を作った、パーシー・アドロン監督に感謝したい気持ちになりました。 心の底から感動した名作です。

最終更新日:2024-06-18 16:00:01

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