ノーカントリー 作品情報
のーかんとりー
ベトナム帰還兵のモス(ジョシュ・ブローリン)は、テキサスの荒野で死体たちに囲まれた200万ドル詰めのトランクを発見する。それを奪うことがどれだけ危険な事態を引き起こすかも予測しながら、誘惑に負けた彼はトランクを抱えて車で逃走した。追っ手から、タイヤと肩を撃ち抜かれながらも自宅に戻ったモスは、妻のカーラ(ケリー・マクドナルド)にメキシコの実家へ帰るよう命じて、自身も逃亡の旅に出る。消えた大金を取り戻すために雇われたのは、オカッパ頭の殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)だった。手錠を嵌められても鎖で保安官を絞め殺す怪力の持ち主である彼は、特製エアガンと散弾銃を手にしていた。そして、トランク内に設置された発信器からの信号を察知して、モスの行方を追いかける。感情を表に出さないシガーは、顔を知られた人間を次々と情け無用に殺害してゆく。この連続殺人を担当するのは、年老いた保安官のベル(トミー・リー・ジョーンズ)と部下のウェンデル(ギャレット・ディラハント)だった。しかし、彼らの捜査は常にひと足遅く、シガーの犯行を阻止する役には立たなかった。モスの居所を確認したシガーは、宿泊するモーテルを襲う。それに気付いたモスは、銃撃を喰らいながらもメキシコへと逃げ込んだ。病院のベッドで目を覚ましたモスの前には、別の殺し屋ウェルズ(ウッディ・ハレルソン)がいた。奪った金を渡せば、命は助けてやるとモスに迫るウェルズ。そんなウェルズも、シガーによって殺害された。そして、遂にはモスも…。一方、ベル保安官は、モスの妻であるカーラのもとを訪れて、その身の危険を説く。ベル保安官の不吉な予測通り、シガーはカーラの前にも現れた。投げたコインの裏表で、生死の運命を決めようと不敵に語るシガー。しかし、そのシガーもカーラを殺害した直後、不意の交通事故で重傷を受けるのだった。
「ノーカントリー」の解説
執拗なまでに標的を追いつめる殺人マシーンから狙われた人々の運命を描くハード・サスペンス。「ファーゴ」のコーエン兄弟が、コーマック・マッカーシーの原作『血と暴力の国』を脚色・監督。出演は、「逃亡者」のトミー・リー・ジョーンズ、「海を飛ぶ夢」のハビエル・バルデム、「アメリカン・ギャングスター」のジョシュ・ブローリンなど。第80回アカデミー賞で、作品・監督・脚色・助演男優(ハビエル・バルデム)など4部門を受賞したのをはじめ、カンヌ国際映画祭パルムドールなど、多くの映画賞を受賞した。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 2008年3月15日 |
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キャスト |
監督:ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
原作:コーマック・マッカーシー 出演:トミー・リー・ジョーンズ ハビエル・バルデム ジョシュ・ブローリン ウディ・ハレルソン ケリー・マクドナルド ギャレット・ディラハント テス・ハーパー バリー・コービン スティーヴン・ルート ロジャー・ボイス ベス・グラント アナ・リーダー |
配給 | パラマウント=ショウゲート |
制作国 | アメリカ(2007) |
上映時間 | 122分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:4.42点★★★★☆、19件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
人間の可笑しさや哀しさを描き続ける、異才ジョエル・コーエン&イーサン・コーエンの兄弟監督は、独特の視野から、病める現代のアメリカをいつも浮き彫りにする。
そして、これは、「悪」の映画だ。
原作は、アメリカ現代文学を代表する作家コーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」で、この作品に登場する殺し屋を「純粋悪」と呼んでいる。
「悪」は「悪」でも、恨みとか強欲といった理由を伴わない「悪」があって、それをこのように言っているのだ。
この作品の中の人物たちの死は、すべて「純粋悪」による不慮の、誠に不条理な死として描かれる。
殺し屋を演じる、スペインの名優ハビエル・バルデムが一人異彩を放っている。 コインの裏と表で殺しを決め、残虐でいて礼儀正しい振る舞いが、何とも不気味だ。 エアガンのような酸素ボンベを携えて、次から次へと殺人を重ね、無表情に、冷徹に歩く姿にはただならぬ存在感がある。 悪なのか、神なのか。 彼は、これでアカデミー賞の助演男優賞を受賞した。 これはもう、文句なしに納得である。 三者三様の追跡、逃走劇は、人間の無力、愚かさ、不抵抗の運命を残酷に描き出していて、静寂の中に異様なまでの緊迫感を漂わせている。