別れて生きるときも 作品情報
わかれていきるときも
美智の父は前科を重ねた詐欺常習の鉱山師で、堀り出しもしない金を餌に、他人をだましていた。美智が十七歳の時、父は刑務所に服役した。母は美智を連れ、京都の従妹の家を訪れた。仕立物の看板をさげて細々と暮すことにした。美智が女学校を卒業する日、母は刑務所を出た父に連れられて美智の許を去った。美智は一人ぽっちになった。美智の隣の部屋には、苦学生の石山がいた。二人は愛し合うようになった。祇園祭りの夜、美智は石山の腕に抱かれた。しかし、石山は美智の女学校の教師小野木から美智の父のことを聞き、彼女の許を去った。美智の前に小野木が現われた。小野木は美智の体を求めただけだった。小野木の許を逃げ出し、東京へ出た。昭和六年、美智が二十一歳の時である。満州事変が起った。仕事を探してさまよい歩いていた美智は、失心した。朴泰泳という朝鮮人に救われた。彼が支配人をしている広告取次店で働くことになった。そこへ小野木が現われたが、朴が救ってくれた。五年たった。美智は朴が紹介してくれた東京マネキンクラブで働いていた。仕事の上で、大和自転車に勤める謙吾と知り合った。二・二六事件の日、謙吾は美智に結婚を申しこんだ。美智は決心がつかなかった。二カ月たった。謙吾は思想関係で警察からチェックされている自分を思い、結婚の取消しを願った。美智は父のことを語り、謙吾に結婚してくれるよう言った。子供が生れた。麻子と名づけた。戦争が激しくなった。謙吾は日本社会思想系列という国禁の書を書きつづけていた。謙吾は警察につかまり、南方へ召集された。彼は沖縄へ向う途中戦死した。戦争は終った。美智は虚脱した日々を送った。しかし、美智の心の中に謙吾はしっかり生きていた。その思いは、麻子の中に謙吾のかげを見出す時、切ないほどはげしく彼女の心をゆすぶるのだった。
「別れて生きるときも」の解説
田宮虎彦の『別れて生きる時も-愛情について-』を、松山善三・井手俊郎・堀川弘通の三人で脚色し、「青い野獣」の堀川弘通が監督した女性映画。「南の風と波」の中井朝一が撮影した。パースペクタ立体音響。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:堀川弘通
原作:田宮虎彦 出演:高島忠夫 司葉子 板屋幸江 一木双葉 児玉清 小林桂樹 芥川比呂志 河津清三郎 田中絹代 沢村いき雄 賀原夏子 田武謙三 菅井きん 小池朝雄 細川ちか子 松村達雄 加藤武 宮田芳子 市原悦子 藤戸木綿子 石田茂樹 佐田豊 田中邦衛 水の也清美 荒木保夫 関田裕 鈴木和夫 細川隆一 峯丘ひろみ 南道郎 松本染升 西村晃 古田俊彦 加藤茂雄 鈴木治夫 |
---|---|
配給 | 東宝 |
制作国 | 日本(1961) |
上映時間 | 100分 |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「pinewood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2019-03-04
夫の高島忠夫が戦時中に赤紙が来る前に纏めた書斎の歴史の手記が警察に見付かり連行されて仕舞うシーンも在った。「そんな恐ろしい隠し事は止めて!」と妻の司葉子に咎められるんだ。空襲警報の下,防空壕に家族で逃れたりと「何処か遠い国の出来事が」日常化されて夫も南方徴用へと歴史の波に呑み込まれて行く