P.N.「グスタフ」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2019-10-17
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
戦中戦後の混乱期では、一度生活の基盤を失うとどん底に落ちて這い上がることが難しい。自分ひとりが生きて行くだけで精一杯で、他人のことまで面倒見切れない。社会的弱者の女性は特にその特徴が強い。今作は、男に騙され裏切られる主人公大和田房子を田中絹代が熱演して、溝口リアリズム復活の力作になる。8年後の遺作「赤線地帯」と同じく、日陰の身の女性の代弁者たる溝口監督のメッセージが心に響きます。”パンパン”と呼ばれる街娼を描く後半では、警察の取締りで病院に収容される妹夏子が偶然房子に出会う。この病院の場面が素晴らしい。ラスト、街娼同士のリンチの被害に遭う女性を、戦死した夫の妹にした作為はあるが、廃墟の女の戦いと教会の十字架を映したシーンは印象的だ。時代の所為だけではないところに溝口の意図したものを感じます。