叛乱(1954) 作品情報

はんらん

昭和十年八月十二日。福山から台湾に転出を命ぜられていた相沢中佐は、赴任の途中、陸軍省に立ち寄り、軍務局長永田鉄山を一刀のもとに斬殺した。意外にも犯人には毫も罪の意識がなく、兇行直後、平然と任地に出発しようとして傍人を愕かした。それも理わり、永田少将は満洲事変によってふくれあがった日本陸軍の規模をそのまま対支対ソ戦に切換えるべく財閥と結んで国家総動員体制を企図したいわゆる統制派の中心人物であり、これに対して資本主義による農漁村の疲弊に憤り、腐敗した財界、政界、軍閥を倒して天皇親政の国家改造を断行しようとする皇道派の、相沢はもっとも純粋な分子だった。果然、「相沢につづけ」の合言葉が皇道派青年将校のうちに湧きあがった。これら直接行動派の急尖鋒は、歩一の栗原中尉、それを時機至らずとして抑えているのは同じ歩一の山口大尉、そして民間の志士北一輝、西田税らであるが、相沢公判をめぐる統制派の陰謀に刺戟され、かれらの主張が早急に蹶起へ傾むきかけた矢先、第一師団の満洲派遣が決定した。それも三月。「二月にやろう」との声が歩一から歩三に拡がるが、歩三の安藤大尉のみは依然慎重にかまえている。しかし、その彼も一夜娼家で農村の身売娘の悲惨さを目のあたりにして、同志の声に従う決心をした。西田も山口大尉ももはや大勢をせきとめることは不可能だった。--二月二十六日朝。首相、陸相、侍従長、蔵相、内府、警視庁……あらかじめ、暗殺の目星をつけていた要人の許に、幾手かに分れた総員千七百の蹶起部隊は、夜来の白雪をけって殺到した。要人らの多くは即死、あるいは深傷を負ってあやうくのがれた。軍も政府もなすところを知らなかったが、二十七日に至って香椎中将を司令とする戒厳令が布かれ、二十八日、宮廷内部に統制派の強硬論が通り、一方七千の部隊に叛乱軍討伐の勅令が下った。が、アドバルーン、ラジオ等による香椎中将らの必死の説得で、兵の多くは原隊復帰、主謀者--軍人側香田、安藤両大尉以下十七名、民間側北一輝、西田税以下数名は、弁護も主張もゆるされぬ一方的な軍法会議によって、死刑を宣せられた。十日にわたる無政府状態の末、広田内閣が生れ、かくて統制派の勝利はしだいに財閥との結合による国臨戦体制へと一切をみちびいていった。

「叛乱(1954)」の解説

二・二六事件に至る陸軍部内の葛藤相剋を描いた立野信之の直木賞受賞作品「叛乱」を原作に「にっぽん製」の菊島隆三が脚色、「広場の孤独」の佐分利信が監督した。なお、佐分利監督は撮影中病いに倒れたため、阿部豊監督が後をつぎ、これを内川清一郎監督が補佐している。撮影は「銀二郎の片腕」の小原譲治、音楽は「広場の孤独」の早坂文雄。キャストは映画俳優の他、新派、新劇人が大挙出演している。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督佐分利信
原作立野信之
出演細川俊夫 清水将夫 鶴田浩二 山形勲 安部徹 佐々木孝丸 鶴丸睦彦 辰巳柳太郎 菅佐原英一 丹波哲郎 村山京司 大野康二 今清水基二 中原謙二 竹中弘道 池月正 三砂亘 近藤宏 千葉徹 小浜幸夫 旗昭二 沼田曜一 福岡正剛 和田孝 野村清二郎 石山健二郎 島田正吾 御橋公 林幹 中山九州男 坂内永三郎 石黒達也 藤田進 武村新 喜多川隆 江藤勇 生方賢一郎 清水彰 生方壮児 高松政雄 滝沢修 児玉一郎 冬木京三 倉橋宏明 津島恵子 香川京子 永井柳太郎 三宅邦子 外崎恵美子 木暮実千代 杉寛 小島洋々 島栄吉 宮川玲子 田中春男 水野匡雄 大谷修司 岡龍三 大谷友彦 河谷英二郎 花岡菊子
制作国 日本(1954)
上映時間 115分

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最終更新日:2024-08-17 02:00:06

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