女の中にいる他人 作品情報
おんなのなかにいるたにん
梅雨がまだ明けない頃、田代勲、杉本隆吉は夕刻の赤坂で出会った。同じ鎌倉で隣り合わせに住む二人だが、田代は東京の雑誌社に勤め、杉本は横浜に建築事務所をもち、東京で顔を合わせるのは珍らしいことであった。その日杉本はたまたま東京に勤める妻のさゆりを訪ねたのだ。だが、さゆりは不在であった。その夜田代と飲んで帰宅した杉本に、さゆりの友人加藤弓子から、妻さゆりの死が伝えられた。赤坂の弓子のアパートで絞殺されたというのだ。赤坂、それは田代と杉本が偶然出会った場所である。さゆりの死は杉本家と親しいつきあいをする田代家にとっても大きなショックであった。しかもその死に方が情事の末の絞殺とあっては。さゆりの葬式の日、田代は始終誰かの視線を感じていた。弓子は田代をみつめながら記憶をたどっていた。三月頃さゆりと一緒に出て来た男は確かに田代であった。弓子は疑惑を深めていった。犯人が挙がらぬまま事件も忘れられた頃、田代は妻の雅子にさゆりと関係があったと告白した。雅子は夫の神経を餌んでいた原因をやっとのみこんだ。さゆりは情事に首を絞められて喜ぶ女であった。悌惚と頭を閉じたさゆりの細い首に田代の指が喰いこんでいった。恐ろしい出来事であった。田代は雅子に全てを話した。雅子は殺人犯のレッテルを粘られる家族のことを思い、自首することを必死にとめた。だが田代の心は再び良心の呵責にせめられた。田代はいたたまれず杉本に告白した。瞬間、事の重大さに動揺した杉本だったが、やはり杉本も家庭の平和を主張して自首をとめた。しかし田代の決心は日に日に固まっていった。“罪を隠して生きるよりも自首した父の方が人間として立派なことを子供もわかってくれるはずだ”。夫の決心を知った雅子は夫のグラスに白い薬を落した。妻として、母としての雅子にはこれ以外方策はない。女の中にいる恐ろしい他人の心が犯した冷酷な殺人であった。
「女の中にいる他人」の解説
エドワード・アタイヤの「細い線」を「肉体の学校」の井手俊郎が脚色、「乱れる」の成瀬巳喜男が監督した心理ドラマ。撮影は「けものみち」の福沢康道。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:成瀬巳喜男
原作:エドワード・アタイヤ 出演:小林桂樹 新珠三千代 稲吉千春 塩崎景子 長岡輝子 三橋達也 若林映子 草笛光子 稲葉義男 加東大介 黒沢年男 十朱久雄 藤木悠 中北千枝子 田辺和佳子 河美智子 伊藤久哉 小川安三 一の宮あつ子 佐田豊 河辺昌義 鈴木治夫 関千恵子 毛利幸子 矢野陽子 中山豊 二瓶正也 浦山珠実 内山みどり 宮田芳子 庄司一郎 大塚秀男 坂本晴哉 小野松枝 |
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配給 | 東宝 |
制作国 | 日本(1966) |
上映時間 | 101分 |
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