越前竹人形 作品情報
えちぜんたけにんぎょう
竹神集落は越前の国武生の寒村で竹細工の産地として知られている。竹細工の名人といわれた父吾左衛門を失った一人息子の喜助は、仕事場へ見知らぬ美しい女の訪れを受けた。かつて喜左衛門に世話になった、芦原の遊廓に働く遊女玉枝であった。喜助の心の中に玉枝の面影は強く残った。名前を頼りに探しあてた喜助は、喜左衛門の作った竹人形を見せられ、その傑作に感動した。玉枝の境遇に同情した喜助は、百五十円の大金を苦面して竹神の家に来てくれと頼んだ。喜助の真情に打たれた玉枝は、秋も深まった日喜助の家に来た。狂喜して迎えた喜助と、ささやかな式をあげたが、しかし何故か、喜助はその夜から、竹人形を作る事に没頭した。初めて喜助の家を訪れた雪の日の玉枝の姿を写したものだった。冬近く竹人形は完成した。見事な出来ばえに郷土民芸展で、県知事賞があたえられた。喜助の人形は「越前竹人形」と名づけられ美術工芸品として売り出された。同じ頃玉枝は芦原のお光を訪れ、形ばかりの夫婦の悩みを訴えたが、世間なれたお光に元気づけられて帰った。春--喜助の留守に京都から竹人形を仕入れに来た番頭の忠平は、偶然にも玉枝が京都の島原にいた時のなじみの客だった。美しい玉枝に忠平の心は魅せられ、突然彼女にいどみかかった。竹人形の評判もたかまり喜助は多くの弟子をもつ身となった。喜助はお光のもとに立ち寄り、喜左衛門と肉体関係のない事を知り救われたように竹神へ帰った。喜助の心のなごむのもつかの間玉枝は妊娠した。忠平との子供である。胃を診てもらうと称して京都に発った玉枝は、忠平の残酷なしうちを後に叔母を探し歩いた。淀川の渡し舟の中で玉枝は、腹痛のあまり失神した。船頭の臨機の処置で胎児は川に流された。憔悴し切った凄艶な姿で帰ってきた玉枝をむかえた喜助の願いもむなしく、玉枝は昏睡していった。喜助は玉枝の死後、越前竹人形の製作をぷっつり断ち切ったという。
「越前竹人形」の解説
水上勉の同名小説より、「日本一の色男」の笠原良三が脚色、「嘘(1963)」の吉村公三郎が監督した文芸もの。撮影は「雑兵物語」の宮川一夫。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:吉村公三郎
原作:水上勉 出演:若尾文子 山下洵一郎 中村玉緒 中村鴈治郎 殿山泰司 伊達三郎 浜村純 西村晃 寺島雄作 水原浩一 天野一郎 石原須磨男 村田扶実子 嵐三右衛門 |
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配給 | 大映 |
制作国 | 日本(1963) |
上映時間 | 102分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2023-12-15
この映画「越前竹人形」は、主演の若尾文子の、なんともけだるく、妖しい魅力に圧倒される作品だ。
着物の着こなし、帯、首すじ、柔らかなおくれ毛、裾からはみ出た脚、白い足袋-----何もかもまぶしいくらいの美しさだ。
遊女上がりの妻の所在なさと官能的な悶えが、モノクロの画面に漂う感じさえしてくる。
水上勉の原作、吉村公三郎監督で、薄幸のヒロインと竹細工に打ち込む青年の狂気の愛を描き、胸に切々と迫るような悲劇が綴られていく。
若尾文子の淫らなと言いたいくらいの身のこなし方、そのエロティックな風情に、すべてのドラマが吸い込まれていくような印象すら受けてしまう。
長い白い道をさまよい、川べりに出て、小舟の中に倒れ込むまでの、彼女の苦悶の身振りが、痛ましく美しい。