P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
明るく面倒見のいい性格から”若大将”と渾名される、すきやき屋の老舗・田能久の息子で京南大学の大学生・田沼雄一。
彼が水泳部をはじめ拳闘部、マラソン部など毎回、所属する部を変えて、あらゆるスポーツにチャレンジし、途中で美人OLの星由里子扮する澄子をめぐって、ライバルの田中邦衛扮する、石山製菓のドラ息子の”青大将”こと石山新次郎と対決するが、最後は愛とスポーツの両方に勝利するというのが、基本パターンだ。
このルーティンこそが、若大将映画の楽しみだし、個性豊かなレギュラー陣によるアンサンブルの楽しさこそ、娯楽映画のシリーズの良さでもある。
若大将の屈託のなさは、1960年代の日本の若者の憧れの象徴ともなっていて、同時に「そんな夢みたいな青春なんてなかった」という現実からの格好の逃避場所として、ひたすら明るく楽しい映画になっていたのだと思う。
そして、若大将には当時、世相を賑わせた安保もドラッグもセックスも無縁の世界なのだ。
もちろん、東宝映画だから明るく健全にをモットーに、登場人物たちはみんな裕福だし、そのリアリティのなさが、コメディとしても青春映画としても理想的な空間を作っていたのだと思う。 その若大将シリーズの記念すべき第1作目の作品が「大学の若大将」だ。 京南大学水泳部のエースの田沼雄一は、すきやき屋の老舗・田能久の跡取り息子で、父・久太郎(有島一郎)と祖母りき(飯田蝶子)と暮らしている。 青大将は、美人OLの澄子に首ったけだが、彼女は若大将を愛している。 若大将の縁談話で澄子との仲は険悪になり、結局、最後には誤解が解けて元気になった若大将は、大学の対抗戦が始まっているプール会場に駆けつけ、見事、優勝するという、若大将シリーズの”黄金律”が、この第1作目ですでに完成されている。 脚本家の笠原良三と田波靖男は、加山雄三の実生活でのエピソードを若大将のキャラクター作りに取り入れ、日本映画で最も爽やかでカッコいいヒーロー、田沼雄一が誕生したのだ。