P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-17
古臭い、笑えるとつぶやきつつ、つい引っ張られて観てしまう。
村川透監督の「蘇る金狼」はそんな映画だ。
1979年の公開だから、描かれる風俗が古臭いのは仕方がない。
大藪春彦の原作も、劇画的な展開が顕著な一気読み小説だった。
話は典型的なピカレスクロマンだ。主人公の朝倉(松田優作)は、東和油脂の経理部に勤めている。
七三分けの長髪と黒縁の眼鏡。だが、夜の朝倉は狼だ。
ジムでサンドバッグを叩く彼の上半身には、見事な筋肉が盛り上がっている。
朝倉は銀行から輸送中の現金を奪い、金を麻薬に換え、麻薬を使って女を操り、甘い汁を吸いたい放題の会社中枢部へにじり寄って行く。
つまり、この映画は悪党のオンパレードだ。悪には悪を、毒には毒を。
法も正義も介入しない伏魔殿で、社長(佐藤慶)や部長(成田三樹夫)や次長(小池朝雄)や議員(南原宏治)や強請屋(千葉真一)や私立探偵(岸田森)らが果てしない暗闘を繰り広げる。 まるで怪優たちのオールスター・ゲームではないか。 そして、饗宴の中心で強力な磁力を放つのが、松田優作だ。 団塊の世代に属する日本映画の俳優で、運動神経や身体能力に彼ほど自覚的な人はいなかった。 だからこそ、優作の「狂気芝居」は、きわどく成立する。 東京湾第二海堡で撮影されたアクション・シーンの速さは、優作の動きと、カメラマンの仙元誠三の力量に負うところが大きいと思う。