限りなく透明に近いブルー 作品情報
かぎりなくとうめいにちかいぶるー
窓の外を巨大な米軍機の轟音がかすめ去る。ここは東京都下、基地に接した町、福生。もう陽射しが高い午後、一九歳のリュウはノロノロと起き出した。部屋には昨夜のパーティの男女が死んだように寝ているがリュウは気にもせずアパートを出た。フラフラと街を歩くリュウは、飯場のアルバイトの金を届けに来たヨシヤマと会った。油くさいスパゲッティを胃につめ込みながら、ヨシヤマはとめどなく喋り続けた。女、仲間、ヘロインのこと、麻薬まがいを血管に打って死んだ男のこと……。リュウの一日はこのように始まる。明日も、その次の日も同じようなものだろう。そんなリュウの空虚な毎日に存在感をえる人間がいた。リリー、すでに三十歳を過ぎた子持ちで、外国人バー街に店を持つヤクの常習者だ。リリーと会っている時だけリュウは人間との触れ合いを覚え、十九歳の少年に戻る。リリーとりュウはしばしばベッドをともにしたが、リリーはリュウの他にも幾人かの情夫を持っていた。リュウはリリーに「ヒロポンやめたら?」「他の男と寝るなよ、金だったらなんとかするから--」と忠告するのだが、彼女はそんな子供じみた台詞に虚ろに笑うだけだった。その夜もリュウとリリーは危険な“メスカリンドライブ”に出た。強烈なロックとドラッグに酔いながら二人は猛スピードで深夜の街を突っ走る。トマト畑に迷いこんだ二人は、イルミネーションのように光る赤いトマトの間を歩き回る。そしてリュウは、リリーのぬくもりをすがるように求めた。降り出した雨にずぶ濡れになりながら、リュウはリリーに「好きだって言ってくれよ、俺が必要だって……」と言うのだった。ドラッグ、女、酒の虚無的な毎日に満足できないリュウだが、日々の繰り返しを急にたち切れない。しかし、真夏の暑い或る日、突然仲間が死んだ。そして、その死を契機にリュウは日々の繰り返しからの脱出を決意するのだった……。
「限りなく透明に近いブルー」の解説
米軍基地に近い福生に生きる若者たちのドラッグとセックスを描く。第七十五回芥川賞を受賞した村上龍の原作の映画化で、脚本、監督は原作者の村上龍、撮影は赤川修也がそれぞれ担当。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1979年3月3日 |
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キャスト |
監督:村上龍
原作:村上龍 出演:三田村邦彦 中山麻理 斉藤晴彦 石垣光代 伊川東吾 都倉成美 高瀬由梨花 征木五郎 佐久間宏則 中村晃子 アレクサンダー・イーズリー アイク・ウイリアムス キム・ウェルス ピーター ベックレー・トーマス パメラ・カー モアネット・リリー 小松方正 |
配給 | 東宝 |
制作国 | 日本(1979) |
上映時間 | 103分 |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「水口栄一」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-08-02
限りなく透明に近いブルーを観て、とても感動した。これは何よりも飽きさせない魅力があるからだ。私が村上龍さんの限りなく透明に近いブルーを読んだのは18才の頃だった。原作の最後のところで「血を縁に残したガラスの破片は夜明けの空気に染まりながら透明に近い。限りなく透明に近いブルーだ」と書かれいる。私はここまで読んだ時、村上龍さんの世界が大好きになった。それだけにこの映画はひじょうに興味深かった。私は22才の時、村上龍さんのコインロッカー・ベイビーズという本にサインを頂いたことがある。今、私は大阪府茨木市の自宅に併設したところでCabinというマイクロ・ライブラリーをさせて頂いているが、村上龍さんのサイン本も大切に置いてある。村上龍さんの世界はほんとに素晴らしいの一言に尽きると思う。そんな村上龍さんの世界を知ることになったのが、まさに限りなく透明に近いブルーなのだ。この映画を観ていると、何十年も前の記憶が甦ってくる。やはり限りなく透明に近いブルーの世界は魅力的だと思う。村上龍さん、ありがとうございました!