P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2023-11-18
この「海と毒薬」の原作は、第二次世界大戦末期に、実際にあった米軍の捕虜に対する生体解剖実験をもとに書かれた、遠藤周作の問題作で、熊井啓監督は、企画から15年かけて、この作品の映画化を実現。
この原作の小説は、キリスト教的な問題意識で書かれた作品であったが、映画はそれよりも、非人間的な大学の内部の醜い権力闘争が、事件の引き金になっているということを焦点に描いている。
核心になっているのは、熊井啓監督の基本的な理念でもある、ヒューマニズムである。
非常に緊迫感のある社会派ドラマという実りを示した作品だと思う。
重厚なモノクロ映像で、話としては非常に重いが、見応えのある、いわゆる問題提起をした秀作だと思う。