霧の中の風景 作品情報

きりのなかのふうけい

12歳の少女ヴーラ(タニア・パライオログウ)と5歳の弟アレクサンドロス(ミカリス・ゼーケ)は、ドイツにいると聞かされている父に会いに行きたいがため、毎日夜のアテネ駅にやって来るが、列車に乗る勇気はなかった。しかしある日、ついにふたりは列車に飛び乗った。切符がないふたりはデッキで身を寄せて眠る。夢の中でヴーラは父に向けて話しかけるのだった。無賃乗車を車掌にみつかったふたりは途中の駅で降ろされ、行き先を尋ねる駅長(ミハリス・ヤナトゥス)に伯父さんに会うのだ、と答える。警官がふたりを連れて伯父(ディミトリス・カンベリディス)の勤める工場を訪ねると、伯父は警官(コスタス・ツァペコス)に、ふたりは私生児で父はいない、と話す。それを立ち聞きしたヴーラはショックをうける。警察署に連れていかれたふたりはそこを逃げ出し、旅を続ける。山道でふたりは、旅芸人一座を乗せたバスに乗せてもらい、彼らと行動を共にする。その夜、ふたりはバスの運転手オレステス(ストラトス・ジョルジョグロウ)と、道に落ちていたフィルムの切れはしを拾う。そこには白い霧の中に、見えるか見えないか程度にうっすらと一本の樹が写っていた。旅芸人たちと別れたふたりは、雨のハイウェイでヒッチハイクしたトラックに乗せてもらうが、翌朝アレクサンドロスが眠っている間にヴーラは運転手(ヴァシリス・コロヴォス)に犯される。次に乗った列車で警官に見つかりそうになったふたりは、逃げこんだ工場でオレステスと再会する。ふたりはオレステスのオートバイで海岸を走り、テサロニキ駅にたどりつく。再びオレステスと別れたふたりは、ドイツを目指して歩き始める。北方の駅で、ヴーラは人のよさそうな兵士(イェラシモス・スキアダレシス)を誘い切符代を稼ごうとするが、彼は何もせず金を投げ捨てるようにして去った。夜行列車で国境までやってきたが、旅券がないふたりは、川べりで監視の目を盗んでボートに乗る。彼らに向けて放たれる一発の銃声。翌朝、霧の中で目覚めたふたりが対岸に降り立つと、ゆっくりと霧がはれ、緑の草原と一本の樹が現われた。ふたりは手を取り合ってその樹に向かって駆け出すのだった。

「霧の中の風景」の解説

父を探し求めてアテネからドイツを旅する幼い姉弟の姿を描く幻想譚。製作・監督・原案・脚本は「シテール島への船出」のテオ・アンゲロプロス、共同製作はエリック・ウーマン、ラグビール・ヤーダウ、共同脚本はトニーノ・グエッラ、タナシス・ヴァルティノス、撮影はヨルゴス・アルヴァニティス、音楽はエレニ・カラインドロウが担当。出演はミカリス・ゼーケ、タニア・パライオログウほか。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1990年3月24日
キャスト 監督テオ・アンゲロプロス
出演ミカリス・ゼーケ タニア・パライオログウ ストラトス・ジョルジョグロウ イリアス・ロゴテティス ミハリス・ヤナトゥス コスタス・ツァペコス ディミトリス・カンベリディス ヴァシリス・コロヴォス ソクラテス・アラフォウツォス イェラシモス・スキアダレシス
配給 フランス映画社
制作国 ギリシャ フランス(1988)
上映時間 125分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2017-08-29

老人と猫の絆の名作〈ハリーとトント〉には映画〈慕情〉にあやかったシーンがあってユーモラスだったが,本編のラストの大樹へと歩む姉弟の姿も慕情のラストのジェニファー・ジョーンズと重なって来る。本編は父親を尋ね歩く子どもの姿が切なく哀しいが,難解なテオ・アンゲロプロス監督作品の中で一番分かり易く心に響いた!

最終更新日:2022-07-26 11:03:56

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