第三の男 作品情報
だいさんのおとこ
米国の西部作家ホリー・マーティンス(ジョゼフ・コットン)は、旧友ハリー・ライムに呼ばれて、四国管理下にある戦後のウィーンにやって来たが、ハリーは自動車事故で死亡し、まさにその葬式が行われていた。マーティンスは墓場で英国のMPキャロウェイ少佐(トレヴァー・ハワード)と連れになり、ハリーが闇屋であったときかされたが、信ずる気になれなかった。ハリーは生前女優のアンナ(アリダ・ヴァリ)と恋仲であったが、彼女と知り合ったマーティンスは、彼女に対する関心も手伝ってハリーの死の真相を探ろうと決意、ハリーの宿の門衛(パウル・ヘルビガー)などに訊ねた結果、彼の死を目撃した男が三人いることをつきとめた。そのうち二人はようやく判ったが、“第三の男”だけはどうしても判明しないまま、マーティンスは何者かに脅かされはじめ、門衛も殺されてしまった。一方アンナは偽の旅券を所持する廉でソ連MPに粒致されることになり、それとも知らずに彼女の家から出て来たマーティンスは、街の物陰に死んだはずのハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)をみつけた。ハリーがペニシリンの密売で多数の人々を害した悪漢であることを聞かされていたマーティンスはこれをMPに急報し、アンナの釈放と引きかえに彼の逮捕の助力をするようキャロウェイから要請された。マーティンスはハリーと観覧車で逢い、改めて彼の兇悪振りを悟って、親友を売るもやむを得ずと決意したが、釈放されたアンナはマーティンスを烈しく罵った。しかし病院を視察してハリーの流した害毒を目のあたり見たマーティンスは結局ハリー逮捕に協力することになり、囮として彼をカフェで待った。現れたハリーは警戒を知るや下水道に飛込み、ここに地下の拳銃戦が開始され、追いつめられた彼はついにマーティンスの一弾に倒れた。かくて改めてこの“第三男”の埋葬が行われた日、マーティンスは墓地でアンナを待ったが、彼女は表情をかたくしたまま彼の前を歩み去って行った。
「第三の男」の解説
「ホフマン物語」のアレクサンダー・コルダと、「白昼の決闘」のデイヴィッド・O・セルズニックが協同で提供する一九四九年作品で、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した。戦後イギリス文壇で代表的な位置に立つカソリック作家グラハム・グリーンが映画のために原作を書卸し、自ら脚色、これを「邪魔者は殺せ」のキャロル・リードが監督、同時に製作も担当している。撮影は「邪魔者は殺せ」のロバート・クラスカー、装置は「バグダッドの盗賊(1940)」のヴィンセント・コルダ他の担当である。なお音楽はこの映画のためにウィーンのツィター演奏家アントン・カラスが作曲、自ら演奏したものが唯一の伴奏となっている。主演は「旅愁」のジョゼフ・コットン、「白銀の嶺」のアリダ・ヴァリ、「黒ばら」のオーソン・ウェルズ、「黄金の龍」のトレヴァー・ハワードで、以下「会議は踊る」のパウル・ヘルビガー、バーナード・リー、エルンスト・ドイッチ、エリッヒ・ポントらが助演する。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:キャロル・リード
原作:グラハム・グリーン 出演:ジョセフ・コットン アリダ・ヴァリ オーソン・ウェルズ トレヴァー・ハワード バーナード・リー パウル・ヘルビガー エルンスト・ドイッチ ジークフリート・ブロイアー エリッヒ・ポント ウィルフリッド・ハイド・ホワイト ヘドウィッヒ・ブライプトロイ アニー・ロザー ハーバート・ハルビック アレクシス・チェスナコフ ポール・ハードマス |
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配給 | 東和=東宝 |
制作国 | イギリス(1949) |
上映時間 | 104分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:4.83点★★★★☆、8件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-01-14
この映画史に残る名作「第三の男」は、スパイ小説の大家グレアム・グリーンが、映画のために書き下ろした作品を、名匠キャロル・リード監督が、見事な映像美でサスペンスを盛り上げた作品だ。
ジョセフ・コットン扮するアメリカの作家ホリーが、第二次世界大戦直後のウィーンに、オーソン・ウェルズ扮する親友のハリーを訪ねるが、彼は事故死していた。
死んだはずのハリーの不適な笑顔が、一瞬、闇に浮かぶシーンは何度観ても強烈だ。
第二次世界大戦後のウィーンの雰囲気や、大下水道の活かし方。
有名なラストシーンである、警官隊とホリーが、ハリーを追うクライマックス。
石畳みに足音が響き、闇に影が躍る、キャロル・リード監督の演出は、冷たく不気味な雰囲気をもたらし、実にスリリングだ。
アントン・カラスによる民族楽器チターの音色で、ドラマの起伏や感情を表現した音楽も素晴らしい。
出演者たちも、それぞれ持ち味を出しているが、少ない登場シーンながら、圧倒的な存在感のあるオーソン・ウェルズが、やはり素晴らしい。