水の中のナイフ 作品情報
みずのなかのないふ
アンドジェイ(レオン・ニェムチック)は三十六歳。ワルシャワのスポーツ記者で、美しい妻クリスチナ(ヨランタ・ウメッカ)と安定した生活をおくっていた。彼らは週末を郊外で過すのが常だった。その日もヨットの上で週末を過すため湖に向って車を走らせ、途中ヒッチ・ハイクの青年を乗せた。三人は出帆した。朝食の時青年は愛用の大きなナイフを取り出した。水の上でナイフは場違いだったが、それ以上に青年の存在は場違いであり、青年の「若さ」とアンドジェイの「中年」が眼に見えない火花を散らした。アンドジェイは青年が妻に親切なのを見ると、彼に過酷な仕事をいいつけた。ヨットが帰途についた時、ナイフをアンドジェイがかくした。青年は彼に喰ってかかり、もみあううちにナイフは湖中に落ち、青年も足をすべらした。彼は浮いてこない。意外な成行きに、アンドジェイとクリスチナはののしりあい互いに幻滅と憎悪でいっぱいだった。アンドジェイが警察に知らせに泳ぎ去った後に青年が姿を現わした。クリスチナは最初は腹を立てたが、次第に青年の世話をやいた。そして彼の接吻を受けた。やがて湖畔に着くと、青年は走り去った。船着場にはアンドジェイが待っていた。二人は帰途についた。やがて何事もなかったように、またもとの生活にもどるだろう……。
「水の中のナイフ」の解説
イェジー・スコリモフスキー、ヤクブ・ゴールドベルク、ロマン・ポランスキーの共同脚本を新鋭ロマン・ポランスキーが監督した恋愛心理映画。撮影はイェジー・リップマン、音楽はクシシュトフ・コメダが担当した。出演は「夜行列車」のレオン・ニェムチック、新人ヨランタ・ウメッカ、ズィグムント・マラノウィッチなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:ロマン・ポランスキー
出演:レオン・ニェムチック ヨランタ・ウメッカ ズィグムント・マラノウィッチ |
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配給 | 東和 |
制作国 | ポーランド(1962) |
上映時間 | 94分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、5件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-21
この映画の冒頭のシーンは、三人がそれぞれに心の中に持っている鬱屈した感情が、ズバリと表現されている、実に印象的なシーンだと思います。
妻にとっては、夫の嫌味なエゴイストぶりは決して愉しいものではなさそうで、どうせこういう人だから仕方がないというような、なかば諦めの気持ちが、彼女の無愛想な無表情を包んでいるのだ。
夫にしてみれば、妻がそういうふうに自分を密かに軽蔑していることは百も承知で、だからこそ、いっそう虚栄をはってイライラしているという感じなのだ。
これに対して、青年は金持ちの傲慢さに腹が立ってしょうがないので、妙につっかかるような口の利き方をするのだが、妻はこの子、面白い子ね、みたいな顔をするのが、夫にとってはまた微妙にカンにさわるのだが、俺はこんな若僧のことなど何とも思っていないぞ、という気持ちを誇示するために、青年をヨットに同乗させてしまうことになるのだ——-。
映画はその後、ヨットの上での三者三様の思惑を心の底に秘めながら、壮絶な心理戦が展開していくことになるのです。