死刑台のエレベーター(1957) 作品情報
しけいだいのえれべーたー
未開地開拓会社の技師ジュリアン・タベルニエ(モーリス・ロネ)と社長夫人フロランス・カララ(ジャンヌ・モロー)は愛し合っていた。二人の自由を阻む邪魔者シモン社長を亡きものにせんと、二人は完全犯罪を計画していた。殺害計画実行の日が来た。ジュリアンは拳銃をポケットにしのばせ、バルコニーから手すりに錨つきのロープをかけて上り、社長室に入り、社長を射殺し、その手に拳銃を握らせた。彼は再び手すりから一階下の自分の部屋におり、何くわぬ顔をして、彼を待っていた電話交換手とビルの管理人と共に、エレベーターでおり、外に出た。しかし手すりに錨つきロープを忘れて来たことに気付き、ビルにかけこみ、エレベーターに乗り、上りはじめたが急に階の途中でエレベーターは止まってしまった。ビルの管理人が電源スイッチを切って帰ってしまったのだ。ジュリアンは何とか脱出せんと試みたが無駄だった。フロランスとの約束の時間はどんどん過ぎていった。彼を待つフロランスは段々と不安にかられ、彼を求めて夜のパリをさがしまわった。一方、花屋の売り子ベロニック(Y・ベルダン)とチンピラのルイ(ジョルジュ・プージュリー)はジュリアンの車を盗んで郊外に走り出た。車の中にはレインコート、小型カメラ、拳銃があった。前を走るスポーツ・カーについて、或るモーテルに着いた彼等は、ジュリアン・タベルニエ夫婦と偽り、そのスポーツ・カーの持主であるドイツ人夫婦と知り合いになった。ドイツ人夫婦の小パーテーに招かれ、いたずらにジュリアンの小型カメラで写真を撮った後、ルイと共にドイツ人夫婦の部屋を出たベロニックは、モーテルの現像屋へフィルムをとどけ、自分達も部屋に帰った。そのころ、なおジュリアンを探し求めていたフロランスは、夜の女と共に警察に連行された。同じ頃、ジュリアンは尚も脱出せんとしたが万策つき、やむなく朝を待つことにした。一方モーテルのベッドで寝ていたルイとベロニックは夜明けを待たずに起き、ドイツ人のスポーツカーを盗んで逃げようとして見付かり、ルイははずみで彼等を射殺してしまった。アパートに逃げ帰った二人は、今更のように殺したことが怖くなり催眠剤を飲み心中をはかった。ドイツ人夫婦殺しは、宿帳に記載されていたジュリアン・タベルニエ夫婦と云う名と、現場にあった車と拳銃で、犯人はジュリアン・タベルニエと推定された。警察に連れて行かれたフロランスは身分を明し、釈放されたがその時、警部から、ジュリアンが若い娘と共にドイツ人を殺し、逃亡したと云うことを聞いた。朝、エレベーターが動き出し、やっと外へ出られたジュリアンを待っていたのは、身に覚えのない殺人容疑で、彼を捕えんとする警察の手であった。ドイツ人殺しのアリバイを立証する為には、完全犯罪として計算してやった社長殺しが露呈しかねない。警察は、社長は自殺であると思いこんで、専らドイツ人殺しの自供を求めた。一方フロランスはジュリアンが昨夜、車に乗せていた若い娘は花屋の売り子であろうと、彼女の部屋にのりこんだ。催眠剤を飲んだ若い二人は死んではいなかった。フロランスはドイツ人殺しの嫌疑をジュリアンからはらす為、彼等のことを警察に知らせた。その間に部屋を出たルイは、唯一つの彼等の証拠品であるフィルムをとりに、モーテルへと駆け付けた。しかしルイは写真屋の暗室で逮捕された。ドイツ人と共に撮した写真が全てを証明していたのだ。ルイを追って来たフロランスも、社長殺しの共犯として逮捕された。即ち、ジュリアンと共に撮した親しげな写真が彼等の関係を物語っていたのだった。
「死刑台のエレベーター(1957)」の解説
二五歳の仏映画界の新人監督ルイ・マルが、推理作家ノエル・カレフの原作を、自身と新進作家ロジェ・ニミエの共同で脚色、ニミエが台詞を書いた新感覚スリラー映画。キャメラは新人アンリ・ドカエ。巻頭から巻末までを十曲のモダーン・ジャズで通した音楽はトランペット奏者で作曲家のマイルス・デイヴィスで『メイン・タイトル』『エレベーターの中のジュリアン』『夜警の巡回』等と名づけられた十曲が演奏される。種々の新しい試みによってこの作品は一九五七年ルイ・デリュック賞を得た。「抵抗(レジスタンス)死刑囚の手記より」に主演したフランソワ・ルテリエが第二助監をつとめている。出演者は「宿命」のモーリス・ロネ、「現金に手を出すな」のジャンヌ・モロー、「素直な悪女」のジョルジュ・プージュリー、「親分」のフェリックス・マルタン、「夜の放蕩者」のリノ・ヴァンチュラ、「悲しみよこんにちは」のエルガ・アンデルセン等。製作イレーネ・ルリシュ。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:ルイ・マル
原作:ノエル・カレフ 出演:モーリス・ロネ ジョルジュ・プージュリー ジャン・ヴァール イワン・ペトロヴィッチ フェリックス・マルタン ユベール・デシャン ジャック・イリング ジャンヌ・モロー ヨリ・ベルタン エルガ・アンデルセン シルヴィアーヌ・アイゼンシュタイン リノ・ヴァンチュラ |
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配給 | 映配 |
制作国 | フランス(1957) |
上映時間 | 88分 |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。
P.N.「グスタフ」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2019-09-29
愛する男女が出会う場面が一切なく、運命の悪戯に翻弄されて、ラスト、写真に浮かび上がる二人の愛の証明。記録映画手法の客観的視点で冷静に描かれた、男と女の愛の情念。
25歳の映画青年ルイ・マルを支えた、ノエル・カエフの脚本、アンリ・ドカエの撮影、マイルス・デイヴィスの音楽と、一流のスタッフが協力して創作した、総合芸術としての映画の魅力を遺憾なく発揮したサスペンス映画の金字塔です。
不倫の果ての夫殺しを謀るジャンヌ・モローの悪女の魅力に抗い切れない、その演技を含んだ存在感が、物語に意義を与えている。